短編 百合小説
@tukigi_
第1話
窓の外ではしとしとと雨が降り続いている
こんな憂鬱な天気には見飽きてきた
ソファーに座りながら、ふと窓際のカレンダーに視線を写すと今日は七夕らしい
「今年は織姫と彦星会えないなぁ…」
同じくカレンダーに蒼色の目を向けていた君が呟く
「大好きな人と一年も会えないだけでも僕無理だなぁ」
なんてロマンスも何もない言葉を返す
「確かにね。じゃあ梅雨のこんな憂鬱な天気でも毎日大好きな人に会える僕は幸せだね」
とこちらを見ながら言ってくる君の目に僕が映る
この頃はあまりよくその瞳を見ることはなかったけど、改めてみると透き通った綺麗な輝きを放っている
吸い込まれるように凝視していると
「ん?どーしたの、固まっちゃって」
と少し眉をよせて言う
ハッとして
「あ、いや別に、なんも」
我ながらかなり怪しい言動。
恋人の瞳に見惚れてたなんてキザな台詞は恥ずかしくていえない
なんて考えていると、今度は君が此方を凝視してくる
「ど、どうしたの?」
少し動揺してしまったのは言うまでもない
「綺麗な目だなって」
言葉が理解できると頬に朱が集まる
「いや、そ、そんな」
恥ずかしくて顔を伏せてしまう
「透き通ってて紅茶みたいであったかい貴方の目、僕大好き」
この可愛い恋人はいつから恥ずかしげもなくこんなことを言えるようになったんだ。
嬉しくて、でもちょっと恥ずかしくて顔を押さえながら悶えているとソファー隣にストンと腰を下ろす音が聞こえた。
「ねぇね、こっち向いてよ」
顔を向けると、心底幸せそうなその瞳と視線が交わる。
にこりと笑って君はこう言う。
「やっぱり颯ちゃんの事、大好きだなぁ」
そんな貴方が眩しくて儚くて、壊れないように大切に抱き締めた。
「ねえ、僕今世界で一番幸せだ」
うん、と言いながら肩に顔をうずめた恋人の髪に唇を落とす。
外の暗い天気とは裏腹に、部屋の中は暖かい光が満ちている。
その光に照らされた二人はまるで織姫と彦星のように一緒に居られるこの時間を噛み締めていた。
短編 百合小説 @tukigi_
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