兄の心

お題：未熟な真実 制限時間：15分

兄の心

　飛び降りる２人を目撃したのは、かれこれ３年前になる。それは同時に俺が当主となった日でもあり、家族と仲間が死んだ日でもある。

　飛び降り死体として見つかったのは１人だけ、兄の婚約者は見つからなかった。しかも痕跡すらなかった。

　兄の婚約者である義姉はそもそも飛び降りる時に死んでたように俺には見えた。お姫様だっこされた義姉はぐったりと身体を崩してた。

　そしてなにより胸に深く刺さってる刀と、真っ赤に染まった服。

　そんな状態でビルの屋上から飛び降りれば、力を使わない限り死ぬの絶対だ。なのに義姉だけは見つからなかった。

　力……刀を通して、俺たちの一族は伴侶となる人と繋がる。身体が弱いが剣術の秘術などを身体に秘めて生まれた一族の動く手足となるために。

　兄にはその素質がなくて、俺が当主となった一族を皆殺しにした。

　力以外の才能は全て兄が持ってた。俺がいくら練習を重ねても未熟さが目立ち、身体能力が少し高いだけの状態で悔しい毎日だった。

　義姉はそんな俺をバックアップしてあげてといつも優しい言葉をかけてくれた。

　同期の儀式……それがなければ、俺が当主になることも兄が、義姉が死ぬこともなかった。

　兄は義姉と繋がることはできず、できたのは俺の方だった。

　兄は狂ったように外に飛び出した。

　俺は旧友たちと捜索して、家に戻ったときには終わってた。

　最初から、兄は外に飛び出してはおらず屋根裏に隠れてたーーそう手紙にかかれており、書かれたとおりの場所で落ちるのを目撃した。

　なぜ兄がそんなことをしたのか理由はわからない。

　見つからない義姉も気になる。

　だから、俺は兄の変わりに力を使う学校へと通うことにした。

　真実を見つけ出すために。