貧血気味な吸血鬼姫と熱血気味な王子様のお話
真理亜
第1話
「カミラちゃん、カミラちゃん」
ジャンヌは隣で寝こけている少女を揺り起こす。
「ん~?」
「起きて、授業終わったよ。食堂行こ?」
「あ~い、おっとぉ...あ~...フラフラする~...クラクラする~...」
カミラと呼ばれた少女は、起きて立ち上がろうとする。だが、立ち眩みを起こしたかのようにまた座り込んでしまった。
「また貧血? ちゃんと血を吸わないからだよ?」
「ヤダ。あんなもん吸いたくない。血生臭いし」
「そりゃあ血だもんねぇ」
「それに鉄錆臭い」
「いい加減慣れなよ。吸血鬼なんだからさ」
そう、カミラは吸血鬼なのだ。ただし血が大嫌い。
「いいんだよ。私にはこれがあるんだから」
そう言って紙パックのトマトジュースをチューチュー啜る。
「全くもう...」
「ジャンヌ、それより早く食堂行かないと席が無くなるぞ?」
「あ、あのね、カミラちゃん。何度も言ってるけど、わ、私の血だったらいつでも吸っていいんだからね?」
そう言ってジャンヌは頬を赤らめながら上目遣いでカミラを見上げる。
「ヤダ。だって痛そうじゃん。親友にそんな思いさせたくない」
「だ、大丈夫だよ! ほ、ほら、最初は誰でも痛いって言うじゃない? で、でも、すぐに気持ち良くなるって聞いたよ? わ、私、カミラちゃんになら初めてを捧げても後悔しないよ?」
ジャンヌはまるで恋する乙女のように熱っぽい眼差しを向けてカミラに迫る。
「止めんか。誤解を生みそうな発言は」
「あうっ!」
カミラにデコピンかまされたジャンヌが涙目になる。
「この作品、百合のタグは付けて無いんだから、百合展開に持ち込もうとするんじゃない」
「うん、ゴメン。何言ってるのか分からない」
そこへ誰かやって来た。
「ハッハハハッ! なんだなんだ! カミラは今日も顔色が悪いな! 鉄分足りて無いんじゃないか! レバーを食え! レバーを!」
「アーサー、暑苦しい。近寄って来んな。それとレバーは死んでも無理」
アーサーと呼ばれた男は、鍛え上げた筋肉を見せ付けるようにポージングしながら続ける。
「ハッハハハッ! 我が婚約者殿は相変わらずツレないな! 貧血にはレバーが一番効くと言うのに!」
「あんな砂っぽくて生臭いもん絶対に食わん。それと婚約者だからってあんま馴れ馴れしくすんな」
そう、この二人は婚約者同士なのだ。
カミラは吸血鬼の国ナイト公国の第1王女で、アーサーはデイ王国の王太子なのである。
ここデイナイト王公国には昼と夜二つの顔がある。昼はデイ王国が、夜はナイト公国が支配している。
昔はいがみ合っていた両国はいつしか和平を結び、その友好の証としてナイト公国の王女はデイ王国に嫁ぐようになっていた。
この二人はそう言った政略目的の結婚なのだが、決して仲が悪いという訳ではない。カミラがツンデレなだけである。
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