第4話

「ねぇジークフリート、ちょっと聞きたいんだけど」


 ジャンヌが呆れたような顔で尋ねる。


「なんだぁ!?」


「この学園は佩刀を禁止されているわよね? その剣どうしたの? どうやって持ち込んだの?」


「うぐ...そ、それは...」


 ジークフリートが怯む。


「しかもさっき、何も持っていない状態からいきなり出したように見えたんだけど、一体どこに隠しててどうやって出せたの?」


 ジークフリートは当然ながら学園の制服姿だ。そんな剣を隠しておけるはずがない。ジャンヌの疑問はもっともだろう。


「た、だからそれは...」


「ジャンヌ、あんまり虐めてやるな。ジークフリートはきっとイリュージョニストなんだ。種明かしを迫るのはルール違反だぞ?」


「そうか! 手力なのね!」


「そうです! これが手力なんです!」


「「 ジャジャジャジャジャ~ン♪ 」」


「き、貴様らぁ! 騎士を愚弄するかぁ!」


 ジークフリートが完全にキレた。


「愚弄してるのは貴様だぁ!」


「ぐぇっ!?」


 今にも斬り掛からんとしたジークフリートを、どこから現れたのかアーサーがド突いた。ジークフリートが倒れ込む。


「俺の婚約者に剣を向けるとは何事だぁ! 万死に値する行為ぞ! おら貴様ぁ! さっさと立ちやがれ! 俺が直々に成敗してくれるわぁ!」


「ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ! お、お助け~!」


 アーサーはジークフリートを、引き摺られるようにして連れて行ってしまった。


「うわぁ、カミラちゃんってば、アーサー殿下に愛されてるね~♪」


 ジャンヌが揶揄うようにそう言った。


「アーサー...お前もイリュージョニストだったのか...」


「そこ!? 気になるのはそこなの!?」


 ジャンヌはズッコケた。


「いやだって突然現れたから...」


 するとまた誰か現れた。


「邪悪なる吸血鬼よ! 神の御名においてそなたを滅する! 謹んで神の裁きを受けるが良い! 悪魔め! 退散せよ!」


 首にニンニクを巻き付けて十字架を握り締めているのは、教会の大司教の子息ヨハネだ。


「ヨハネ、近寄らないで。ニンニク臭い」


 ジャンヌが鼻を摘まみながらシッシッと手を払う。


「我慢しろ! 僕だって臭いんだ!」


「意味無いし。カミラちゃん、ニンニク大好物だよ?」


「な、なにぃ!? じゃ、じゃあこれならどうだ!?」


 ヨハネが十字架を前に突き出す。


「十字架なら肌身放さず持ち歩いているが?」


 カミラは首から下げた十字架を見せる。


「ぬなっ!? く、クソッ! これならどうだぁ! 聖水を食らえ~!」


 そう言ってヨハネはカミラに向かって聖水をぶっ掛けたのだった。

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貧血気味な吸血鬼姫と熱血気味な王子様のお話 真理亜 @maria-mina

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