第3話

「うわぁ、なんてテンプレな悪役令嬢」


「いっそ清々しいな」


「あの笑い方って誰が始めたんだろうね?」


「作者の中では白鳥麗子だと思ってるらしいぞ?」


「うわぁ、懐かしいね~」


「作者といえばさ、アイツの名前ってマリアンヌだろ?」


「うん、聖女繋がりで行ったらマリアの方が相応しいのにね?」


「自分のペンネームと同じだから避けて「ンヌ」を付けることにしたらしいぞ?」


「うわぁ、知りたくなかった裏事情」


「ちょっとぉ! 私を無視するんじゃないわよぉ!」


 マリアンヌがプンプンしてる。


「うるさいなぁ。なんだよ? まだ居たのか?」


 カミラが物憂げに返す。


「ずっと居たわよ! 悪い!? アンタさっきからなに訳の分かんないこと言ってんのよ!」


「訳が分からんのはお前の方だろ。私を田舎者だとか言ってたみたいだが、そしたらお前だって田舎者じゃねぇか。この国とウチらの国は表裏一体なんだからな」


「うぐ...そ、それは...言葉の綾よ...」


 マリアンヌが急にトーンダウンした。


「だったらさっさと消えろ。メシが不味くなる」


「くっ! こ、このぉ! 吸血鬼風情が偉そうにぃ!」


 その言葉にカミラがキレた。一瞬でマリアンヌの後ろに回り首筋に牙を突き立てようとする。


「たかが人間風情が吸血鬼を舐めんなよ」


「ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ!」

 

 マリアンヌの顔が一瞬で真っ青になる。


「血ぃ吸ったろか?」


「い、いやあ! た、助けて~!」


 マリアンヌは這う這うの体で逃げて行った。


「フンッ! 他愛のない」


「カミラちゃん...あんたどこの間さんよ...」


「このくらいならいいじゃあ~りませんか!」


「だから新喜劇ネタはもういいって...」


「今日はこの辺で勘弁したらぁ~!」


「ええ加減にしなさい!」


「もうええわ!」


「ってか、アイツはあんなんでホントに公爵令嬢なのか?」


 カミラが本題に戻した。


「そうよ。残念ながらね」


「この国将来大丈夫か!?」


「さぁ...上の方がどう考えてんだか分かんないし...」


「そんなこと言ってるけど、ジャンヌ、お前だって公爵令嬢だろ?」


「マリアンヌんちは筆頭公爵家だもん。ウチみたいな、なんちゃって公爵家とは格が違うよ」


 ジャンヌは自虐的になっているようだ。


「なんちゃってって...」


 そこへまた誰か現れた。


「この汚らわしい吸血鬼めぇ! 今日こそは成敗してくれるぅ! そこに直れぇ!」


 そんなことを叫びながら、カミラに剣を突き付けて来た。


「ジークフリート」


 それは騎士団長子息のジークフリートだった。

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