第3話 妹と買い物してみた。
「そういえば、気になってたんですけど。来た時から、お父さん、お母さん見かけませんです。どこに居るんです?」
「…海外旅行中。」
僕の家族はそろいもそろって、どこか遠くに行く習性でもあるんだろうか。定期的にお金は振り込まれて、僕自身は生活は出来ているけれども。両親も何してるんだ?
謎多き家族である。
場所は家の外、現在、妹に町の案内をしている。なので、一緒に歩いているのだが…。
「なんか、凄い数の視線感じますです。」
「そりゃ、見た目は美少女だからね。」
「照れるです~。」
「僕にとっては恐怖だよ。」
あまり、目立ちたがり屋じゃない僕にとって、注目されるのは苦手だ。しかし、こいつが外に出たい出たいとうるさいので仕方なく外に出た訳である。しかし、本当に見た目は凄い美少女だわ。おかげで
「しかし、話で聞いた事はありますが、実物は凄いです。」
「何が?」
僕にとっては、普通の交差点の光景に見えるんだけど。
「見ればわかりますです。向こうの真ん中らへんにヒラヒラ衣装で杖持った女の子が居ますです。」
実花言う方向を見ると、ヒラヒラとしたスカートが目立つ、ピンク色でゴスロリ調の衣装を着ている10代くらいの女の子が居た。しかもキラキラとした杖を持っている。勿論、衣装と同じ色でピンク色だ。まるで…
「確かに居るね。で、何が凄いの?」
「実物の魔法少女初めてみるです。」
「・・・・・。あれはただのコスプレだと思う。」
魔法少女みたいな格好だけど、この街にはたまに出没するのだ。魔法少女風の服装を着た女の子が。
「そうです?」
「そうだよ。出かける前に見た魔法少女のアニメがあるでしょ?」
「あれ、結構面白かったです。」
魔法少女マジカルキラリ。
「マジキラ」とも呼ばれ、毎週日曜日の夕方頃に放送される、今人気のある魔法少女アニメだ。一応、子供向けのアニメなんだけど、かわいい女の子が出るだけでなく、緻密に出来たストーリーと迫力のある戦闘シーンなどで話題となり、今では映画化もされ、アニメ、劇場版ともにヒットしている作品だ。しかも。
「この街の風景、どこかで見たことあるとデジャヴみたいなこと感じてない?」
「そうですね…。どことなく、さっき見た魔法少女アニメの日常シーンで、主人公のきららちゃんが学校帰り中で友達のつきちゃんと一緒に信号待ちしてる時の例の交差点の景色に似てるです。もしかしてあのアニメ、ここの町が舞台となってます?」
「…大正解。」
信号が青になる。
こいつの事だから「なんか似てますですぅ~。」とかアホな事言って来ると思ったら、具体的に答えてきた!しかも、初見で、たった一話ぐらい見て、後半ほぼ戦闘シーンで、信号待ちのシーンは前半の最初ぐらいの一瞬の目立たないシーンなのに、具体的に答えてきた!こいつ、只のバカではなかった!!
「成程。それであの魔法少女アニメの多くのファンたちが、舞台であるこの町を訪れ、しかも自分も魔法少女に成り切りたいが為に、ああいう格好をする訳です。さっきからお兄ちゃん、私をバカにしてそうな態度でしたので反撃しておきましたです。」
してやったりとニヤリとして振り向いてきた。くそ、無駄に鋭いし、無駄にかわいい。
「とにかく。魔法少女みたいな格好な人が居ても、魔法少女じゃなくただの人だと言う事。そもそも、魔法少女の存在自体、現実では皆無に等しいからね。つまり、魔法少女はアニメにしか存在しない。」
横断歩道を渡り終える。
「つまり、ただのコスプレ少女です?」
「だだのコスプレ少女でしょ。」
信号が赤となる。
車が動き出し、人混みのせいか、あの魔法少女のコスプレをした女の子の姿が見えなくなっていた。僕は実花を連れて、目的地へ向かって行った。
― ◇ ―
「着いた。」
「大きい建物てすね。」
「まぁ。そこで色々買物しなきゃいけないけどね。特にお前関係で。」
僕の言う目的地とは、「マルキ」という大型デパートだ、5階建てで、階数はそこそこであるものの、建物の面積は広く、建物内にはスーパーマーケット、100円ショップ、洋服店など、多種多様な店が入っており、他にもフードコートやアニメグッズなど充実している。そんな解説はさておき。
「さて。まず洋服から…待って、何処へ行くの?」
実花が更にエレベーターで上の階へ上がろうとしようとしていた。
「え?適当にアイスを食べて、ついでにクレープとたこ焼きを食べようと。」
「食いしん坊か。」
こいつ、姉公認自称妹こと実花が同じ屋根の下で住むにあたり、何かしら準備していると思ったら。何も準備していなかったのである。荷物も何も持っていなかったのである。いや、何故か姉のボイスレコーダーを持っていたから、必要最小限の物は持っていたのであろう。
しかし、こいつに洋服とか足りないものとか無い?と質問した際、「服?これ一着で十分です。なにせ私は美少女ですし汚れませんです。足りない物はお兄ちゃんの愛情ですね。」とほざきやがったので、もうこれは服を買いに行くしかないと思いました。なので、沢山服が売ってあるであろうし、色々と売っているここにした訳である。白ワンピース一着だけなんて悲しいものだし、あとで洗濯機へポイしてやる。優しいなぁ、僕。
まぁ、何やかんやで服売り場に到着した。
「沢山、お洒落な服がありますですー。お兄ちゃん、これとかどうです?」
「ん。似合うんじゃないかな。」
以外と、他の服にも興味があるようだった。ワンピース一着だけで言いつつ、他の服が欲しいかったのか。まぁ、年頃の女の子だし、オシャレしたい気持ちを隠したいから、あんな発言でもしたのかな。
「やっぱり、お兄ちゃんもかわいい顔ですからね。このチェック柄のスカート似合うと思うのです。」
「なるほど。参考になるね。っておいこら。僕に女装しろということ?」
「えっ。女装趣味じゃ無かったんです!?良く、ひらひらスカート姿で見るからてっきり…」
「あの姉えええぇぇ。僕の黒歴史写真をいつまでぇぇぇぇ。」
「写真…?あぁ、そうですね…。そうでしたです。可愛らしい姿でしたよ。」
「くそお。帰って来たら問いただしてやる。それより、お前の服選びが先決よ。」
「今着てる服で十分です。私、綺麗なので。」
「そういう訳にはいかないでしょ。ちなみに、今着てる服、強制洗濯機行きだから。」
「エ゛ッ。」
まるで、カエルの潰れたような声か聞こえたが、気にしない。
「今着てる服が無かったら、裸です!マッパです!!ハッまさかお兄ちゃんは可愛い顔して、そういう趣味を…変態です!!」
叫ぶな!指差すな!可愛い顔言うな!!
「変態じゃねぇ。だから服買ってやるって言ってんの。何が良い?」
「じゃあ、白のワンピースです!」
「結局!変わらない!!」
買ってやるけれども。
「白のワンピースが似合う美少女、それは私です!!ついでにこれもよろしくです!。」
実花から、何か書かれたいるらしい、Tシャツを受け取った。
「美少女天使」と書かれていた。
「お前…これ…着るの?」
「当たり前じゃないです?」
この、自己評価高すぎ自称妹にはなにを言っても、自分美少女万歳と言うのだろう。
この後は、クレープを食ったり、実花にアイスを食わせたり、ついでにたい焼きを食わせたりしていた。てか、美味しそうに食うなぁ、こいつ。
「ふがぶが。」
「食べながら喋るんじゃなく、飲み込んでから喋って。」
「…今思ったんですが、おね…お兄ちゃんは何か欲しい物ないですか?」
お姉ちゃんとか言いそうになってたような気がしたのは気の所為かな?
「うーん。ちょっとお金が溜まったら、ミシンでも買って、裁縫の幅を広げようかなと。」
「…本当はお兄ちゃんじゃ無くて、お姉ちゃんですよね。」
「普通に男なんですけど。」
「それはどうでしょう。見た目からして、男成分皆無です。むしろ女性と聞いてしっくりします。」
「家に帰ったら。何時間説教してほしい?」
「ごめんなさいです。」
全く、見た目で判断するとは失礼な。ん?
「そういや。何かさっきから、人が居ない気がするんだけど。」
「そうですね。何が変で…―ッ」
実花の顔が何が恐ろしいものを感じたかの様な、強張った表情をしたかと思うと。
「すみません。少し急用が出来ましたです!5分位で戻ります!大人しく待っててください!!」
「ちょっ。実花!?何処に行くの!」
「トイレです!」
そう言って、何処かへ走って行ってしまった。
いきなりだったので、ビックリして暫く放心してしまったが、実花の表情で、ただ事ではない何かが起こりそうになっていることは確かだった。
「クソっ。絶対何か、危険な事に巻き込まれてる気がするような!大人しく待っていられな…」
瞬間。物凄い音をたてながら、付近の天井が崩落した。そして、瓦礫と共に砂埃が舞い上がり、あたり一面の景色が見えなくなる。
「っゲホゲホッ。アイツ、本当に大丈夫なの!?大丈夫じゃないよねこれ!!」
実花が行った方向とは、反対側の天井なので、崩落に巻き込まれたという心配はないけど、僕自身の方が危ないかもしれない。
しばらくして、砂埃が晴れてくる。すると―
「…え?なにこれ?」
崩落した天井からは空は当然見える。しかし。
「なんか空が赤いんだけど。しかも、なんか変なオーロラが出てる。」
それはもう見事な、白いオーロラが。ゆらゆらとカーテンが揺らめくように動いている。
まるで、別世界に来たようだ。
そんな不思議な光景が広がっていた。
「外にまで世紀末になってたら、僕泣くぞ。」
そんなことを言いつつ、じっとしてたら状況が変わらないので、実花が行ったのであろう場所を予測しながら、僕は走った。
「なんていうか、人一人いないなんて、異常すぎるし、おまけにあの空。どうなってるの?もしかして、お姉ちゃんはこのようなことを何度も体験してたの?尊敬するわ!!」
心のなかで恐怖を感じていて、現実逃避したい気持ちがあるが、姉から妹として託されたあの子が現在進行形で危険な事に巻き込まれてるかもしれないし、何より、
「絶対に訳アリだよね、あの子!死なせたら世界が大変になる系だったらヤバイじゃん!なんで僕にたくしちゃってんの!?あの姉!!」
弟とはいえ、僕ただの一般人なのに!!うわっ!
まるで大地震が来たように、グラグラと大きく世界が揺れた。立てなくなり、思わず転びそうになる。
うん。完全に立てない程じゃないから、震度6まではいってないね。と、僕は冷静に分析して…る暇ない!!
建物全体が軋む音が聞こえ、恐らく僕のいる建物は倒壊寸前であろう。一部崩落してるけど。
なので、これは姉公認妹実花より、僕の方が危ない。多分!
流石に、自分の命を優先せざる得ない僕は、恐らく、生命の危機に誰しもが発動するであろう、火事場の馬鹿力を発動させ、急いで1回まで猛ダッシュで降り、出口まで直行した。
予想通り、出口付近に来たところで、建物の上から破壊音が聞こえてきた。てか、ヤバイヤバイヤバイヤバイ。崩落はじまっちゃてるよ!!間に合えええええ!!
もはや何も考えず、生存本能任せで全力ダッシュするしかなかった。
瓦礫が上から降ってきた。
壁からヒビが入り、一気に大きくなった。
天井が一気に迫ってきた。
ガラスの破片が瓦礫と共に飛んできた。
そして、
大型デパートだった建物が倒壊した。
― ◇ ―
まあ、助かったか助かってないと言えば、助かった。生きた心地しないけど。あと、一秒でも遅かったら、確実に瀕死or死んでた。だって、思いっきりガラスが足に刺さってるもん。大量出血起こしちゃってるもん。奇跡的に足以外刺さってないけどさ。超痛い。倒壊した時の風圧とか瓦礫とかで体のあちこち打ち付けちゃって、足以外も痛いけど。
それはそれとして。
「あー、どうしよ。実花大丈夫かな?まだ建物内だったらもうだめかも。怒られる以上は確実かもね。てか何でアイツは待ってって言ったらんだろう。正直に待ってたら、倒壊に巻き込まれて死んでんじゃん。」
心配しつつも、文句をたれ流す僕である。
「いや、そもそも。一般人じゃないかもしれない姉と違って、僕はただのごく普通の一般人だから、全力だしても誰かを救えないのは当たり前。うん。だから問題事を一般人であるがために、無能な弟、つまり僕に託したのがいけないね。人選がいけなかったんだね。うん。」
責任を姉に押し付けようとする、クズ人間な弟が誕生しようとしていた。まぁ、僕だけど。
「よかった。生きてて良かったよ。」
なんだか、追い込まれ過ぎて、幻聴まで聞こえるようになったか。
僕はもうダメだぁ~。
「幻聴じゃないよ。君がいなくなれば、僕らにとってとても困る事だからね。」
「困る事?」
せっかくなので、少し反応してみた。幻聴だけど。
「幻聴じゃないって。君にはとあるおおきな可能性があるんだ。世界を救える。そんな可能性が。」
目の前に、白くてふわふわした、
アザラシが浮かんでいた。
みはるの日常 霧島桜 @422886
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。みはるの日常の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます