第2話  妹が出来ました。

「なんか、普通に美味しくてムカつくです。私の作った料理がゴミみたいです。」




 そんなこと言うけど。それ、僕が食べる筈だった目玉焼きとサラダだからね。何ちゃっかりと横取りしてんの?おかげで、僕の朝食は食パン1枚だけだからね。妹を名乗るものよ。




「そんなことより、君。」




「君という名前じゃありませんです。ミカエルという立派な名前があるです。そして、あなたの妹でもあるです!!」




「はいはい。あと、名前は「実花みか」という名前じゃなかったっけ?」




「・・・・・今は「実花みか」という設定でした…。」




「設定?」




「はわわわわ!!違います!聞かなかった事にしてください!です!!」




 設定とか言いだしたし。僕の名前分からなかったし、何より一緒に暮らしたことはともかく、会ったことさえ一度も記憶に無い。絶対に僕の妹じゃないのは確かだ。




「もしかして、姉の関係かな?あいつ、いつも何かしらトラブルに巻き込まれてるイメージが強いし。」




 確か2,3年前に、姉が突然、なんか訳ありっぽそうな女の子を連れてきて、お泊りした事があったし、それ以外でも何度か知らない人たちと何度かお泊りした記憶がある。最近は、姉が帰ってくる日が少ないような気がしてたが…




美空みそらさんですか?美空さんなら事情があって、いつ帰ってこれるか分からないそうで…。あっ。」




「・・・・・。」




 今更、口を手で隠しても遅い。なんで、姉の名前が出で来るんでしょうか?それは簡単です。絶対に今回の件、姉が絡んでいるからです。


 紹介しよう。三浦みうら美空みそら。年齢は二十歳。僕より3つ年上。僕の姉。現在、美人で目立つので、国内、海外で活躍していることは耳にしているけど、実際に何しているのか分からない謎の人物。1週間で1億稼いだとか、テロを未然に防いだとか、日本に影響を及ぼすほどのお嬢様と知り合いだとか、噂の絶えない人物。そして、何故か怪我の絶えないし、喧嘩は凄く強い。怒るとめちゃくちゃ怖い。けど、周りに人が絶えないし、一緒にいると安心できて、信頼出来て、凄く優しい不思議な人物。


 けど、やっぱりトラブルは姉の周りでよく起きて、安易に近づいたら巻き込まれ必死。付いたあだ名がトラブルガール☆みそらである。僕がつけたあだ名だけど。


 バレたら「みはる!!」とか言って怒られるから黙ってるけど。




 ここまでくれば、分かるだろう。そう、僕の姉は一言で表せば、歩くである。あっち行けば、トラブル。こっちにいけば事件、ふらふら行けばイベント厄介事。そして、今回。




「ミカエルと言ったね。」




「今は実花みかという立派な名前がありますです!そして、あなたは何と言おうとお兄ちゃんです!!」




まだ言うか。すごいな。でも、そこまで貫き通すのは、何かしら重大な理由があるのだろう。




「姉…美空からなにか伝言でもありましたか?」




「それなら、レコーダー?というものに残しておいたと言ってましたです。何せ、私はあなたの妹として完璧に成る為に、ひみ…つ…に…。ぎゃあああああ。話してしまったですうううううう!!」




ボイスレコーダーか。こいつ。自ら自爆しやがった。口が緩いのか、頭がアホなのか。




「そのレコーダーというのは、姉のものだよね。どこにありますか。」




「しりません。二階の机の上です。」




 頭がアホな方か。




「僕の部屋の机の上ですか。そうですか。ありがとう。」




「なんで、知ってるんですううううう!?」




 アホ通り越して、バカだった。


















 本当に。僕の勉強机の上にあったよ。こいつが正直者のバカで助かった。少しひと悶着あったけど、




「この通り、ボイスレコーダーは僕の手の中だ。これで、お前がここにいる理由と姉の目的、そしてすべての真実がこの中にデーターとして残っている。そして、その情報を今から流す!さあ、観念しろ!!」




「嫌です!!そもそも、もうすぐ学校の時間です!!早く行かないと遅刻しますよ!?」




「バカめ!今日は日曜日で学校は休みだ!!お前がダメだと言ってもこの情報はここで公開する。つまり、今から、閉ざされたままだった開かずの扉がついに開く時なのだ!暗闇だった部屋に光を当てれば部屋の全貌が明らかになるのと同じ!さあ、禁断の書がついに開られる時が来た!!」




「なんか、キャラが変わってて怖いでですう!!そして、何言ってるかよく分かりません!!」




 なんか、ごちゃごちゃ言ってるけど気にしない!ノリで言ったのだ!ノリで!


 本来なら、姉だろうと他人のスマホは見てはいけないものだ。だけど、今回はこの妹を名乗る美少女が現れたから、僕の平穏な日常が崩れる可能性が極めて高い。その原因が僕の姉なら、これまであまり言わなかったけど、今回は別だ。徹底的に姉に問い詰めてその経緯を明らかにして、ごめんなさいと言わしてやる。スイッチ、オン!!




「…あーあー。テスト、テスト。声は入ってますか?…よしっ。でも、電池の残りが少な…ブチッ・・・・・」




「」


「」




「…電池、交換しましょうか。」




















「- あーあー。テスト、テスト。声は入ってますでようか?…よしっ。でも、電池残りが少ないのがちょっと問題かな?ま、大丈夫でしょう。多分!さて、。あっ。録音切り忘れた。電池がもったいない!ああっ落ち!ガタン!ザザザザザザザ!ピッー。」




「」




「」




 お…おっちょこちょい…。お姉ちゃん。テスト音声、切り忘れてるよ。しかも落とした音したような…。けど、この声。この口調。やっぱり姉の声だ。多分。次の録音が本題の録音だろう。






「― やっほー。美空だよー。私の天使ちゃん元気ー?あっ。弟も生きてるー?。起きたらびっくりしたよね?知らない美少女が目の前でおはようしちゃたんだから。」




 「やっほー」じゃないよ。はぁ。やっぱりこいつ姉が元凶だったか。はい。びっくりしました。思ったよりも激しい起こされ方されてびっくりしました。




「- まあ、経緯を話すと長くなるし、弟でもある君も巻き込んじゃったしね。もう勘づいていると思うけど、私が普通のじゃない事に巻き込まれやすい体質ということは分かっているよね。以前話したし。」




  はぁ、全くこの姉と来たら。また、変な事件に巻き込まれてるし。それでこその姉だけども。はて?お姉ちゃんが何か非日常的な事件にあっても僕は驚かない自信はあるけど。あれ?以前話した?まぁ、今までは大抵姉の話は半分以上は流してたからな。記憶に無いのは当たり前か。




「― それで本題に入るけど。その私の天使、つまり、現在家に居る見知らぬ女の子。これから妹になるからよろしく。」




 はあ!ちょ!僕一人でこいつの面倒を見るの?面倒くさ!!美少女だから許すけど!!なんか、面倒事の予感がビンビンするんだけど!!しかも、これ、おまえの仕事でしょ!?姉よ!今どこに居る!!ペットの世話はともかく、人の世話なんてした事ないよ!?おい、妹(仮)!小さい胸を張ったって、大きくはならないよ。




「- 私に押し付けようなんて、考えないほうがいいよ。だって、私これまで以上に忙しいもの。暫く家に帰れないと思ったほうがいいし。世界中探してもどうせ見つからないもの。ちなみに、自分で解決すること!世の中、不思議な事がいっぱいあるんだから。」




 おいいいい。僕、これからどうなるの!?ねえ、どうなるの?姉の不思議な日常、僕にもやってくるの!?平穏な日常がぶっ壊れるの!?




「― 私の弟なら、大丈夫!きっと、何か起こっても乗り越えてくれるはず!!………多分。」




 多分。じゃないよ!!なんでそこは不安気なの!間の沈黙は何?僕も不安だけど!!確かに僕は、何も能力は持っていないただの一般人だよ!!何らかのチカラを持っているであろう姉と違って!!




「― こほん。それで、新しく出来た妹の事なんだけど…。名前は実花。実る花と書いて三浦みうら実花みか。勿論、本当に最初から血の繋がった妹では無いよ。つまり、義理の妹って訳。まあ、血の繋がった妹でも通じるぐらい、少し君に姿が若干似ているから、設定上、二卵性双生児の妹って事にしておいた。年齢も設定上、君と同い年にしておいた!やったね。学校でも一緒だよ!!」




 「やったね。」じゃないよ!そんな雑な設定、初めて聞いたよ!!あと、地味に僕が学校で面倒くさい事になる気しかしないんだけど!!てか、学校!?いつの間に済ましたの!?




「― 一応、神様に頼んで、ちょっと弄ったから!!問題なし!!あと、追い出そうとちゃダメだよ!あの子の居場所は君しか居ないんだから。ちゃんとお兄ちゃんしててね!」




 問題しかないよ!!神様っていたの!?もしかして、バレてたのか!?トラブルガール☆みそらの発生源!!ごめんなさい。僕が悪かった。いつも、お姉ちゃんを模した人形を作って、トラブル自然発生装置とか、怪物姉とか、女帝お姉ちゃんとか、名前を付けて遊んていた事も謝ります!やめないけど!!




― 最後に、ザザザ…。知らない記憶があっても、それは夢だからね。実花の事、よろしく頼むね。何があっても、その子を守ってね。それじゃ!!




 最後に意味深な事言って、結局何か腑に落ちないまま、姉の話は終わった。












「という訳で、私は妹で、あなたはお兄ちゃんです!!分かりましたです!?」




  結局、僕はこいつ実花と暮らさなきゃならないのね。姉の言うことは聞かなきゃならないとだし。ハア…。




「分かった。分かりました。姉が認めたからには、僕も認めないとね。今日から君は妹だ。よろしく。」




「なんか、ぶっきらぼうな返事です…。けどよろしくです。」




 今日から、僕の家族に妹が加わった。姉の話にはまだモヤモヤしたままだけど。




「しかし、更に姉の謎が深まったような気がする。疲れるとは思ってたんだけど、想像以上に浸かれた…。」




「妹私の顏でも見て、癒されます?」




「さらに、疲れそうだから遠慮しとく。」




 ぎゃー、ぎゃー。何か言ってくるけど気にしない。そういえば。




 僕は、姉の話を思い出しながら、ある事に気が付いた。




「いつも、僕を呼ぶとき、「みはる」呼びだったはずなんだけど…。」




 それが無かったのが、少し違和感を感じた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る