第13話 おわり
こうしてこの病気とはオサラバした。
が、会計などを済ませながら、考えていた。なんとなく病院全体が常とは違う、妙な感覚に包まれているのが垣間見えた。ここのところの状況を反芻して考えていた。
『竹内まりや』や採血をしてくれた人、看護師たちのため息や疲労、診断を下した医師の機嫌の悪さ、一瞬垣間見えた苛立ち。
特に三十代やそれより若い医師の人当たりの良さは、以前の医師とは違うものだ。とても柔和になり、コミュニケーション能力は格段に向上している。しかし、ここのところの医師たちの笑顔や柔和さは常とは違った。それは何かを隠そうとしている笑顔だった。それが隠しきれないほど、節々に現れていた。
決定的なのは新型コロナウイルスの影響だろう。医療現場が振り回されているのが手に取るように分かった。患者が急激に増減するというのも、振り回される一因だ。作業というのは、急激に増減すると、体力的にも精神的にもついて行けなくなる。
二〇二〇年春の緊急事態宣言の後、若者の体力が減少し、体育でも怪我が増えたという報道があった。若者ですらついて行けないのであるから、大人はなおさらだろう。
振り回されて、医療という徹底して合理的であるはずの場所も疲弊しきっていることに同情した。と同時に、手を煩わせて申し訳ない気がした。
そして、自動精算機のディスプレイに表示された金額を見て、「高い」と独り言を言った。克服されたはずの疲労と焦燥がよみがえりそうになった。
毛細血管拡張性肉芽腫 まさりん @masarin
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