第6話 救いの手

 迫り来る追手、だけどガランはもう抗う体力や気力はもう残って無かった。

「双子の片割れは死んだか」

 なにもする気力がない。


 目の前の死の恐怖を感じられないほどにガランの精神は崩壊していた。

「なに、すぐに家族のもとに行けるさ。可愛そうにな。お前の両親が交わしてはいけない契りを結んだせいでこうなったんだから」


 憐れと言葉を投げる兵士の言葉は全く耳に入らず。目に光は灯していなかった。

 男の剣が天に突き刺して、ガランの首に振り下ろされようとしたその時だ。


「パパ」

 幼い少女の声が耳に響き、ガランに剣を向けた男は、首と胴体が2つに別れて、首から血を吹き出しながら倒れた。


「何だ。新手か」

 驚く兵士達、その目の前にいたのは真っ白な鎧を着た金髪で30~40くらいの筋肉質な体をした男だった。


「お前達、魔人側の連中だな。こんな幼い少年を殺そうとしていた」

「だからなんだ。お前達気人には関係ないことだろう」


「関係なくないさ。大の大人が数人でこんな子供を殺そうとするところを目撃し、見て見ぬふりはバールメラ王家の当主として名が廃る事。お前達はここで死ね」


「は、例え王族の当主でもこの数相手に無事でいられるわけがあるまい」

「心配せんでももう終わっている」

 男は剣を鞘にしまうと同時に数十人いた敵の兵士達の体が避け血の雨を降らせていた。


「俺の剣は神速の剣術。切られたことを感じさせないほどの早さでお前達の体をバラバラにさせる技だ」

 ガランの命を狙っていた兵士達は誰一人として残っていない。ただの肉片と化している。


 命の危機は去ったものの精神崩壊しているガランの様子は簡単に変わるものでもない。

「パパ、大丈夫」


「大丈夫だアリシャ、だけどお前はあまり兵士達の方を見るな」

「全く、子供がいる前でショッキングな対処はしてほしくないのですが」


 敵がいなくなると、ガランと同じくらいの年をした少女と、美しい女性が物陰から姿を表した。

「仕方がないだろ、兵士をつれてない状態で俺1人だけであの数相手にするにはこれしかなかったんだ」


「全くアリシャの方は私が顔をふさいでいたから良かったものの、その少年はどうするのです。どう見ても精神崩壊しているじゃないですか」

「そうは言っても命を救ってやったんだから恨まれる筋合いはない」


「俺は、助かったのか」

 命はある。だけどこの一晩でガランが失ったものはあまりにも多すぎた。

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魔人と聖人が争う世界で呪われし運命背負った少年達は世界を改変させる カマリナ @kamarina

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