∞.final stop・hope


    *


 ――どこか遠くで、何か、音がきこえる。


 あれは……そう……列車の、警笛だ。それと、同時に〈何か〉が語り掛ける〈声〉もきこえる、気がした。

 長い、永い、〝旅〟をしていた。しばらくはずっと、ひとりだった。けれど、とある[少女]が〝光〟をもたらせてくれた。

 [彼女]の[笑顔]が浮かんだかと思うと、たくさんの人々の顔が流れるように、浮かんでは消える。――救えた人、救えなかった人。

 また、[彼女]の笑顔が浮かんだ、かと思うと、誰かが〝彼〟を呼んでいる声が聞こえた――――。


    *


「――……さん。 お父さん!」

 呼び掛けられ、〝彼〟は覚醒する。……長い、長い、夢――……いや、大切な〝記憶〟を思い出したような気がする。

 今が、夢か現か分からなくなって、〝彼〟がしばらく呆けていると、少年が〝彼〟の顔を覗き込む。

「……お父さん? ねぇ、どうしたの? 緊張して疲れちゃった? でも、ほら、もう起きないと。 もうすぐお母さん来るんだって」

 少年――〝彼〟の息子がそう話すのを反すうして、ようやく、〝彼〟は状況を思い出す。……あぁ、そうだ。今、出産を迎えた妻を待っていたところだった。まだ、頭の中では〝記憶〟がちらついていたが、〝彼〟は息子に微笑みながら「……分かったよ」と答え、身体を起こす。

 そのすぐ後、女性――〝彼〟の妻が、赤子を抱いて、姿を現した。立ち上がり、〝彼〟は彼女の目の前に立ち、大きくうなずいてみせた。

「……おめでとう、お疲れ様」

「ありがとう。 さ、あなたのお父さんよ」

 妻がそう言いながら、抱いた赤子を〝彼〟に差し出す。〝彼〟は恐る恐る、赤子を受け取り、しっかりと腕に抱く。

 ……女の子だった。眠そうに欠伸をしている。じっと見つめていると、なぜか懐かしい気がした。思わず、〝彼〟はその顔を見つめていると、ふと、女の子が視線に気付いたのか顔を上げる。

 次の瞬間――――。


 ――――[にぱっ]と、[彼女]が笑った。


 その笑顔に、三つ編みの[彼女]の[笑顔]が重なる。[彼女]との約束と、[彼女]が口にした言葉が、〝彼〟の中に反響する。


〝私、必ず見つけますから。 ――絶対見つけますから!〟


 ……本当に、やってくれた。[彼女]は〝彼〟を見つけて、約束を果たしに――〝彼〟の元にたどり着いたのだ。 思わず、[彼女]を抱き締めながら、〝彼〟は呟く。

「……[アン]……」

「え、〝ヴァイ・・・〟、何か言った?」

 妻の問いかけにうなずくと、〝彼〟は微笑みながら、口を開くのだった。

「名前だよ、この娘の名前は――――」




 ――〝The train〟 continue running……――

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Star Light train 〜whereabouts of the stars〜 紡生 奏音 @mk-kanade37

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