3-4
*
その「繰り返し」のしばらく後。
ヴァイはやはり、まだもう少し〈此処〉で〝答え〟を探すことになるだろうという結論に至っていた。一方のアンも色々考えていたのだろう、〝何か〟を掴んだ様子だった。何度か終点を通り過ぎた後、ふと、アンが何か言いたげに、最後尾で佇んでいた。
「ねぇ、ヴァイさん。 ……私たち、一つ、約束をしませんか?」
ヴァイが隣に立った途端、アンが真剣な
「何をだ?」
「私たち、もう少し、この列車にいないといけないと思うんです。 今はできないけど……いつかは転生することができるはずです。 それで――転生した先でも、私たち、また〝出逢える〟よう、約束するんです」
あまりに突拍子もないアンの提案に、思わずヴァイは面喰らった。……必ず〝出逢える〟という保証はないはずだ。けれど、アンの
――考えれば考える程、無茶だとしか思えなかった。だが……それも悪くないかもしれないとヴァイは思えた。
「アン、お前は見習いだ。 きっと俺の方が先だぞ」
答える代わりに、ヴァイはアンの頭をぐりぐりと乱暴に撫でながら、そう言った。すると、アンからは「ちょっと〜!」と抗議の声が上がったが、真剣な表情は変わらなかった。
「大丈夫です! 私がきっとヴァイさんを見つけますから!」
……普通、そういうことは男の方がするものだと思うが。そう言い張るアンが少し生意気に思えて、ヴァイは気が済むまで、「彼女」の頭をぐりぐりと乱暴に撫で続けた。アンからはまた「ちょっと〜!」という抗議の声が上がった。
「私、必ず見つけますから。 ――絶対見つけますから!」
ヴァイが撫で終わると、アンがそう言って、[にぱっ]と笑った。その笑顔に根負けして、ヴァイは「……あぁ、頼むよ」とうなずいてみせた。
「約束の証に、何か……。 あ、そうだ! 名前、聞かせて下さい! 『ヴァイ』って本当の名前じゃないですよね?」
同じ名前で転生できるかどうかなんて分からないのに、気休めのつもりだろうか、アンがそんなことを尋ねる。それでも良いかと思えて、いつだったかふと思い出した本来の名前をヴァイは口にした。
「――ルドヴァイン、だ。 お前は?」
「アンフェリカです」
「良い名前だ。 ……さあ、そろそろいくぞ」「はいっ!」
うなずいて、アンが今までで一番明るく、[にぱっ]と笑った。ヴァイもうなずき返して、列車の方に向き直るのだった。
――こうして、ひとつの〝答え〟にたどり着いたふたりは、少しだけ、「前」へと歩き始めたのだった。
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