この世界では最弱らしいので守られ続けます

三兎

なんでこんな強いの!?

欅 稲。15歳。卒業旅行でなんとイギリスへ!

ここから始まる、私の幸せHAPPYー!!

「動くな!!この飛行機は俺たちが乗っ取った!!」

前言撤回…!

突然5人ほどの集団が立ち上がる。鞄からはナイフやら拳銃やらとにかく物騒なものを取り出す。そもそもなんで空港で見つかってないのか不思議だけど、かといって空港のガバガバセキュリティを攻めても仕方ない。

とりあえずこれは逆らわないように…それにしても、なにが目的なのだろうか。金か?注目?

「今からこの飛行機は中国に向かう」

嘘でしょー!

もう地中海近いよ?引き返すの?は?

「大変だ!」

なんだなんだ。

「なんかよく分からんけど操縦するやつ故障した!」

はぁ?

そう、乗客と同時に機長も脅し、操縦を代わっていたそうだが。飛行機の操縦をするくらいならそれなりには出来ると思っていたのだが。

「ゲームと全然ちげぇーーーーー!!!」

当たり前だろばか。

某夢の国のアトラクションのように落ちていく。

あぁ、終わった……………………

そして飛行機は墜落した。爆発したので、痛みなど感じなかったが、窓から地面が見えたときは、もう何も考えていなかった。私の短かった命は、マッチ棒みたいに消えた。


気付けば私は草原にいた。近くには森、草原、森、草原…つまりなんもない。

なんだここ…てか死んだんだけど…

そして突然目の前に現れたのは、青色の小さな物体。

まるでスライムのような、というかスライムの形をした、というかスライム。スライムである。つまりこれは。

異世界転生だ…!

そしてやはり私は運が良い。もしここで強そうなバケモンと遭遇していたら即死だ。この世界に戦闘という概念があるなら練習しておかないと。あとよくあるのは王国があって…勇者とかいて…ギルドとかあって…やっぱりそうだ。

私の幸せHAPPYはここから始まるんだー!

私は勢いよくスライムに蹴りを入れた。

その瞬間。何度も感じた感覚が私を襲った。転生する前の世界で、いや今来たばかりだから当たり前なのだけれど、主に家の中で、高い頻度で私を一気に地獄に落とすあの感覚。そう。角に足の指をぶつけたときの痛みである。

「っっっっっっっっっ!!!」

しかし私が蹴ったのはスライムだ。いくら大きかろうが密度があろうがこんなガチガチの個体ではあるまい。一体どういうことで?

「いっ………た」

蹴りにいってたし、最悪折れたかもしれない。しかし私に救済は訪れなかった。そうだ。例えばRPGなら、大体はこっちが攻撃すれば相手も反撃してくる。やられっぱなしではない。こいつも反撃とやらをしてくるだろう。(私の攻撃ですでに反撃めいたものをくらっているのは抜きで)

スライムの攻撃といえばなんだろうか?頭突き?そもそも頭とかいう概念があるかはわからないけど。家具と同等の硬さだ。頭突きでもされてみろ、ジ・エンドだ。

そして、その予想はしっかりと当たってしまった。

「うげ」

あっ。折れた。肋骨がかなり折れた音がしたぞ。いや、折れたことないけど。きっと折れている。てか折れただろ。

骨だけじゃなく中の臓器にもダメージが入ったそうで、かなり痛い。体が動かない。私に頭突きをしたスライムは勝ち誇ったように去っていく。だんだんと、意識が薄れていく。これが死なのだと、改めて実感した。もう2度と味わいたくないと思ったのに。走馬灯のようなものが見えた。あぁ…これは…学校?見えるの、前世のほうか。まぁそうだよね。まだ数分しか経ってないし。

視界がどんどん暗くなっていく。死を実感した。

そして再び明るくなった。あぁ、天国とか?

「…」

あれ、なんも変化がない。気づけば痛みも無くなっている。背中に感じる感覚はずっと同じだ。

私は体を起こした。さっきの草原だ。スライムはいない。

明らかに折れたであろう肋骨に触れるが、形を保っている。足の痛みも無くなった。

そういえば異世界転生って、転生した時からなんか能力貰えなかったっけ。そうだ。大体そうである。まさか、私にも?この感じだと、治癒能力とか?まさか不死?

やっぱり私、運良すぎ…?

さて。これからどうしようか。というのも、何故かスライムにすら勝てないのだ。他のスライムに石を投げてみたが、石の方が砕けた。ありえんだろ。鉄塊に改名しろ。

とりあえず自分のステータスとか見てみたいのだが。

というか、こっちに来てから人間を一人も見ていない。何故よりによってこんななんもないところに転生したのか。

その時。急に真っ暗になった。夜ではない。影だ。見上げるとそこには巨大なドラゴンがいましたー。………………そんなことある?


私は今、飛んでいます。ドラゴンに乗って。ドラゴンの首の部分に乗っているのは、飼い主。この人は私を見つけ、近くの国まで送ってくれると言う。旅人らしい。

「中々珍しいよね…あんなところに人がいるなんてさ…」

彼が言うにはあの地域は凶暴なスライムが多いらしく、生身で突っ込んだりなんかしたら即死らしい。

「君さ…なんも持たずに突っ立ってなにしてたの?スライムに襲われなかった?もしかして自殺したかったとか?」

「あーいや…ちょっと…道に迷っちゃって…」

「それはもう方向音痴というかもはや目見えてるか心配になるよ…」

私たちの会話はそれくらいだった。ただの旅人が何故ドラゴンなんかに乗っているのか不思議だったけど、まずはこの世界の事を知ってから疑問を持つ方が良いだろう。

そして、国が見えてきた。

「あぁ、そうだ…君、自覚ないかもしれないんだけど」

「はい?」

「命、狙われてるから」

「…………え?」







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

この世界では最弱らしいので守られ続けます 三兎 @Glitch-cat7

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る