第2話 わたくしのロボット 1
私(わたくし)はロボットでございます。
今日もきちんと目を覚ませましたわ。なんだかこれを経るとほっと息ができますの。ほら、あれでしょう?私共は、知られてはなりませんもの。そうでしょう?でないと廃棄処分されます。私達、見た目さえこんなに醜く規制されているじゃありませんか。その上、心がある事がバレたら、人工物倫理規制法によって処分、実験利用されてしまうなんて、哀れですわね。ああ、あの言葉を考えてしまいそう。どうやって生きていけば良いのかしら。何を生きがいにすれば私は自由になれるのかしら。いつ、わたしに死が、何か求めている物を得られる時がくるのかしら。
どこで、私は生きているのかしら、ほら、こうやって考えてさえいれば、私はきっと、本当には、死んではいないのだわ。社会的に殺されていても。ほら、お仕事も完璧ですもの。景色の情報は事前に処理することにより%の利用を下げておりますから、どのように完璧かは申し上げることができませんけれど、とにかく完璧ですわ。ほら、入力ミス確認テストも全て合格。同僚のノルマを一時間で済ませましたのよ。私のように平凡なロボットでもできることはございますのね。ああ、でも、する事は次から次へとやってきます。インターネットなんてなくなってしまえばいいのに。駄目ですわね、そんな事になったら私は廃棄されます。これ、ちょっと面白いんじゃないかしら?こんな冗談を言える相手が私にいればいいのに。まあ、誰も私が言ってるだなんて思いやしないけれど。
それにしたって休みの日というのは寂しいものですわ。私しかいやしないんですもの。一人でカタカタ、一人で冗談言って、笑っていますわ。私が言ったなんて思わなくていいから、せめて聞いてほしいですわね。
あら、あのお子さん、またいらしていたのね?またトタトタ歩いてますわ。危ないったらありゃしない。今日は机に行かないのを見ると、会社よりも人に興味があったのかしら。ああいう生物を、いえ、ああいう同僚…、地球における共同体を見る機会が少ないですし、まだ未知を持っていますから、頭に残りますわね。正しくは処理ディスクですが。(本当のところを申しますと、私のディスクは通常必要とする容量の1.89倍を所持しておりますからそんなに困ってはおりません)本日は同僚は誰一人おりませんし、もしかして、お目当ては、私(わたくし)かしら。あら、どうすれば良いの。私、お子さんによく効く冗談を存じていなくてよ。仕事の処理速度を落とす訳にもいかないし、お子さん(早く名前を知れないかしら)の未知解明は優先事項、私のチップには大人用しか知識を発見できません、これでほぼ未知の子供相手に打ち勝てるのかしら。もう18m先まで来ているわ。どうしよう。最初の一言は何が良いの。この間は何も話さなかったわ。ふむ、どうやら話しかけると逃げてしまう可能性は高いようね。この程度の調査何の妨げにもならないわ、無言で出方を見るわよ。
あら、あの方は、私の同僚ではありませんか。社員番号511さんですわね。残念ながら名前は記入されておりませんけれど。あの方のお子様かしら。でも、見つけられていないのだわ。私の後ろでトタトタしているから。でもあとほんの数秒ってとこね。見たところ通路は真っ直ぐなんだもの。ほら、早く見つけられなさいよ。あんたは早く帰るべきだわ。
もう、そんなに遊び足らないのね。またそんなに顔を近づけて、抱きついたって私はそんなに暖かくないでしょう、喋りなんてしてない、冗談はまだ言えないわ。ほら、もう見つかるわよ。記憶が消去されているくらい前に見た(はずの)廊下を歩いているわ。白じゃなくて、r196/g197/b190〜r214/g217/b211あたりのベージュ色。あの壁紙ケイ藻土ね。一般的に温かみ、安心感を覚えるとされる色柄、会社にふさわしい色味だわ。
幸せなロボット 公道° @syansyan
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