ゾッとする程に耽美的で退廃的。息が詰まるほどに妖艶な筆致で描き出される、底知れぬ闇と恐怖。この作品はまさにその一言に尽きるのだが、決して単純なものではない。丁寧な言葉で紡ぎ出された端正な文体は、幾重にも折り畳まれた懐紙のように、物語りの中に幾つもの襞を作る。一つひとつに怪異の名前が冠された短編は、それ自体が妖の様であり、それらは只々、美しく、妖艶で蠱惑的で。時折、無性に覗き込みたくなる。
ある程度、妖怪に興味ある人ならば、目にしたであろう妖怪たちの名。それが、作者様の大胆にして精緻な手によって、生き生きと、否、恐怖と悪意をあらたに吹きこまれ、皆様の前に立ち現れます。いつの間にか、背後に、脳裏に、胸中に、かれらが立ち現れていないよう、ご用心。ご用心。
この作品は、埋もれさせてはいけないやつです。読めば分かります。文章表現や知性の高さもさる事ながら、毎回、新たな挑戦と工夫がこらされている。ちょっと、次元が違う。美しく、醜く、悲しい。世界はこの作品を見過ごしてはいけない!勿論、縦読みを推奨したい。
言葉の選びが綺麗です。紙の本でじっくり読みたい!スマホでさらっと読んでしまっては勿体ない!そんなお話の数々でした。個人の感想ですが、火車は特に好みです。