第4話 不吉な予感

偵察任務を行っている第6班は大量の魔獣の足跡を発見後その足取りを追っていた。


大地を踏み荒らした痕跡から数や体長等の推測がたつ。


平地から草原へ、草の踏まれた後が道となり山へと続く。


「これをどう見る?」


班長のクリスがニキに意見を求める。ニキは茶色い髪を後ろで束ね、丸眼鏡を掛けた小柄な男だ。正当な武闘派というよりはその知識を買われている。


「足跡から推測するにこの大きい方がコカトリス、そしてこの小さい方はゴブリンですね。


野生の彼らが行動を供にし、且つ多数で動く事が自然発生したとは考えられません。


まず間違いなく指揮者がいるでしょう。」


「やはりそうか」


クリスは国を揺るがす大きな事件がおきる、そんな嫌な予感を拭えずにいる。


指揮者とは魔族の中でも言語を理解し、魔獣を使役し、統率を取る者をいう。


いくつもの国や人々が指揮者率いる魔獣の群れの犠牲となってきた。


偵察部隊の任務は先に敵の全容を把握し情報を持ち帰る事である。

先制の優位を取り敵に攻めさせないうちに壊滅させたい。

クリス達は敵に発見されない様に慎重に、その中でも最速で歩を進めた。



山の中腹に差し掛かったところで開けた場所を見つけた。蠢く影を確認し草むらに身を隠す。



推測通りそこにはコカトリスとゴブリンの集団がいた。


「あーそこのお前、お前だよ!」


突然の声に6班の全員に緊張が走った。


「お前、椅子になりなさい」


声を発した主は頭に2本の角があり体長は2メートル程、腕が長く猫背の魔族だった。その魔族がコカトリス相手に椅子になるように命じている。


四つん這いになったコカトリスに乱暴に腰を下ろすと脚を組み話し始める。


「くくっく、人族の国もあれが最後、あの国を滅ぼし幹部になるのはこの私だ!


私こそ幹部に相応しい、お前もそう思うだろ?」


「ギャギャ!」


魔族がそう言葉にすると近くのゴブリンが応じる。


「それで、進行中の部隊の首尾はどうなんだ?


ほう、それは上々だな、王都の人間どもの悲鳴を聞くのが楽しみだ!」



進行中


進行中と言ったのだ


どこを?どうやって?


疑問や不安が頭を掻き回す。


方法はわからないが部隊を編成してこの指揮者とその周囲の魔獣どもは一掃しなければならない。

王都にも危険を伝えなくては。


クリスはハンドシグナルで撤退の合図を出す。


その魔族の顔を目に焼き付けて撤退を開始する。

奴こそがマッシュの仇で間違いないという怒りの火を灯して。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界で全力の恋をしたら英雄になっちゃった件(仮) Rabbi @55rabbit

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ