第4話

 女心は男には分からないらしいが、どうやらそれは本当らしい。彼女が何を考えているのか、俺にはまるで理解できなかった。


 昨日、俺は彼女から告白され──それを断った。


 罰ゲームで俺に告白したのなら、もう関わってくる事はないと思っていた。


 だが、わざわざ俺に話しかけてきた上、友達になろうと提案してくる始末。


 もしかして本当に俺のことが好きなのか? 


 でも、一目惚れする要素がないんだよな‥‥‥。良くも悪くも平凡な見てくれだと思うし。


 だから、何か他の目的があるような気がしてならない。


 二年Cクラスに着いた俺は、自分の席に座り荷物を整理しながら、その事について考えていると。


「なあ、早坂」


 と、悪友の佐々木が声を掛けてきた。


「ん、なんだよ? 佐々木」


「お前、さっき涼風さんと一緒に歩いてなかったか?」


「ああ、見てたのか?」


「悪い事は言わない。涼風さんとは関わらないようにしとけ」


 佐々木は、神妙な面持ちで助言してくる。


「ほう、理由は?」


「あんま知られてねぇんだけど、涼風さんは性格終わってんだよ。陰キャ男子に告白しては、付き合ってすぐに別れを告げるんだ」


「は?」


「要するに陰キャを弄んで楽しんでんだよ。ソースは俺な。一年の頃、告白されて二つ返事で了承したら、一時間くらいでやっぱり別れてって。あれは、俺がショックを受けてるのを楽しんでるみたいだった」


 佐々木はくだらない嘘はつくが、人を貶める嘘をつく奴ではない。


 佐々木の話を全面的に信用するなら、昨日、俺に告白してきた理由にも納得できる。自分で言うのもなんだが、俺は生粋の陰キャラだ。


「でもその話が本当なら、なんで広まってないんだよ?」


「ソースが俺ら陰キャしかねぇからだ。拡散力なんてあったもんじゃないし。下手に大っぴらに話せば、一軍の連中に目をつけられかねん。だから、泣き寝入りしてんだよ」


「‥‥‥世知辛いな」


「あぁ、そういうわけだから涼風さんとは関わらないことをお勧めする」


 佐々木は再度助言すると、自席へと向かっていった。


 なるほど。これで疑問は解消できた。


 やはり持つべきは陰キャの友人だな。

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