第2話 今日が最後の飲み会かもしれない!?
その日もわたしジミ子は出勤していた…
結局どんな事態が来ても出勤してしまう
これが日本人の性なのか…
きっとわたしは大地震が来ても
ミサイルが降ってきても会社にきてしまうに違いない…
そう今まさに恐怖の大王が迫り来るかもしれないのにもかかわらずだ。
「道茂くん、お茶お願い。」
「…はい」
有限会社ノーバーディノーズ
ここはわたしのぱっとしない職場だ
セクハラやパワハラやサービス残業が蔓延している
有給も消化できない、社会の根源、負の遺産!!
人類は滅亡するべきなのかもしれない…
「おっと、道茂さん…浮かない顔してどうしたの?」
ーー高杉 いしき
…苦手なんだよなぁ…この人…
同期で同い年なんだけど体鍛えていて短髪でちょっと日焼けしてて妙に意識高くて、こんな大したことない会社なのに経済とか語りだしちゃったりして…
一生仲良くなる事はないであろうのトップランキングのトップ争いをする人間だ。
別に悪い人ではないのだけども…
「…いえ…別に…」
「気分が、冴えないならもっと自分のために自己啓発するといいよ!きっと人生よくなるよ。この本がおすすめなんだけど…」
ーーーやればできちゃう人の凄い習慣メソッドーーー
出たよ……口を開けばふた言葉目には、自己啓発…改善、なんちゃらを回せって…
私はラノベしか読みませーん。
一生この人とは、仲良くなれない…
「はぁ…努力します」
もうすぐ定時だ。早く帰って1000万の有意義な使い方を探しながらゲヴァを見よう。
「よーし、今日はみんな定時あがりだから飲みに行こう。部長命令だ!今日は飲みニケーションだ」
おいおいおい、部長!?ふざけんなよ部長!?
わたしはそんなのお断りなんですけど!!
なんなの?飲みニケーションって?やめてくれます?
私にはそんな時間はないのですよ。
ただ会社にいるだけで心身ともにすり減ってますけど!?
そのうえプラベートまですり減らすつもりですか!?
どうせもうすぐ人類は滅亡するんだし
ここらで私も一発かましたりますよ!
ジミ子さん本気だしちゃうからね!
今日は絶対、帰ってやるんだから
「部長!」
「おっ道茂くん、いい店さがしといてくれる?できれば串カツがいいかなー」
「いや、その…」
「おぉーそうか、じゃ私のおすすめの店に行こう。魚は好きか?いい店だぞー。よしそうしよう!」
「……はい。わかりました。」
ダメだ私…やっぱり言えない…
ーーー部長のおすすめの店ーーー
おい!全然、普通の居酒屋じゃねーか
めちゃめちゃ安いし期待外れもいいとこだし
そもそも私、魚好きじゃねぇ!!
はぁーもう飲もう飲もう。
やっとられん!
「はぁー…」
「道茂さん、浮かない顔だね?せっかく楽しい飲み会なんだかは笑おう!笑顔、笑顔」
「はい…そうですね。がんばります」
高杉 いしき!
うぜーぇぇぇぇぇぇ
ーーーそして二次会カラオケーーー
「いえーぃ!ゲヴァの主題歌、歌います!」
いやー凄い嫌だったけど、飲んじゃうと楽しいなー
カラオケ最高っ!
もう飲みすぎてわけわかんねぇー
「部長、道茂さん酒入ると人変わりますね」
「高杉くんもそう思うかい?道茂くんも普段地味なんだけどきっと飲みニケーションしたかったんだろう、はっはっはっ」
「さすがは部長。よく見てらっしゃる。部下のこともちゃんと気にしてくれて!俺一生ついて行きます!」
いや、ものすっごい勘違いだけどなー
この中小企業に蔓延した無言のプレッシャーにやられただけだっつーの
そもそも私がただ断れないOL代表なだけだし
あーもうこーいう人達ほんと嫌ぁぁぁぁ
ーー2時間後ーー
あれぇー?
もうみんな酔い潰れてるし
高杉と部長しかいないじゃん…
しかも2人とも潰れてるし
あーめんどくせぇ
一曲歌って帰ろう…
「デンモク…デンモク…」
あった、あった!部長の脇にあるし
「…ん?…ぱさっ?」
ん?なんか落ちた?
パサって黒い塊が…
……
……!?
「な…ん…だ…とぉ…!?」
酔いが一気冷めていく…
私の中で人生最大の愚行がある
決してやるまいと心に誓いを立てた
ジミ子教訓、3つの大罪…
この世で見てはいけないものは三つある
ひとつは殺人現場…
もうひとつはリポ払いの明細…
そして最後は、上司のヅラなのである!
どどどどどどどどどーしよう!?
デンモク取るために部長の頭かすめたらヅラ落としちゃったよぉ!!
てか、部長ヅラだったの!?
はっ!?
「高杉!」
……。
よし寝てる…
部長も高杉も潰れてる間にヅラを戻さなくては…
そーと
そーと
慎重に慎重に…
「………」
ダメだぁ、ぁぁぁぁぁぁー!!!
角度が悪すぎて何度ヅラを戻してもずり落ちてしまうっ!!頭の形よすぎぃぃぃぃ!!
どうする?考えろジミ子。考えろ私。
んー…ん…。
はっ!
そうだ!昨日ゲヴァのプラモ作るために買っておいた超究極瞬間接着剤アカンアルファが確かバックに…!!
「……あった!」
こ、こ、こ、こ、これをヅラに塗りたぐって
塗布!塗布!塗布!塗布!
よし全面にしっかり塗った。
乾かないうちに早くしないと…
部長の頭に落ちないはず!
角度の傾きはウェザリングと思えば多少はよろしい。
ウリィィィィァァァァー!
よし…
はっ!高杉!
貴様みているな!
………
よし寝てる
これで無事にセット完…りょ…
…
し……しまった……
ど、ど、ど、ど、どぉおぉぉぉしよぉぉぉお!?
テンパって焦ってしまったせいで
前と後ろ間違えてつけちゃったよォォォー!!
襟足めっちゃ短かっ!
後頭部までしか襟足ないし!
てか、これじゃ襟足の定義に反するし!
前髪めっちゃなげーし!!
顎くらいまであるし!!
バランス悪すぎてめちゃくちゃ気味悪いし!
どーしよう、どーしよう…
乾いてしまったかな?
取れるかな…
「…」
ダメダァぁぁぁぁ
完全に一体化してる。
いやむしろ本人には嬉しいアクシデント。
でもさすがに前髪は気付く…
そうだ!
付けまつげ用のハサミがあった!
前髪を切ればいけるかも
チョキチョキっとここをこう切って
いやこっちも切らないとおかしいな
こっちもこうこうこうと
おっ、あとここが長いな…
……。
「…ぷ…。」
やばい…やばすぎる…
どんぐりの傘みたいになってしまった…
私のデザインミスなのだけど
やばいんだけど…
笑いが止まらない
は…腹いたい…
笑笑笑笑笑
はー
死ぬーーー
ひーひー
………
はぁーはぁー
あー死ぬかと思った。
どうしよう…
もうこれどうにもならないよね
THE悪循環
かくなる上は…
「…このハゲの記憶を消すしかない…」
「あっすみませーん。スピリタスボトルでお願いしまーす」
※アルコール97%
「お待たせしました。スピリタスになります」
「はーい。ありがとうございます!これで消せます」
「え!?」
「えっ…あっ…いや、辛いことあったので」
「あっなるほど、お察しします。」
おっと心の声が思わずもれてしまった…
よしっ!
装備は揃った。
あとはスピリタスを…
「はーい。部長大丈夫ですか?お水ですよーこれ飲んで酔い覚まして下さいねー」
スピリタスを飲ませて記憶を消す!!
「ブフォ…ゴボゴボ…ゴホゴホ…」
「ダメですよ部長…吐き出したりしちゃ!明日に響きますよ。水(スピリタス)ちゃんと飲んで下さいね」
「ゴボゴボゴボ…ヴォホ…」
「ほらほら、部長飲みっぷり素敵ですよー」
「ゴボボボ…」
大丈夫かな?なんか死にそうだけど…
あっ
…あれ?…痙攣してる?
…え?泡ふいてんだけど!!
…これやばくない!?
急性アル中だ!!
やばい救急車呼ばなくちゃ!
「誰かー!救急車を呼んでくださいー!」
ーーーーーーサイレンが響くーーーー
「一件落着…これで大丈夫だよね。」
多分あのハゲの記憶も消しとんだはず…
あー今日アンゴルモアの大王が来てくれればよかったのに…
疲れたぁ…
今日使ったお金
スピリタス
2500円
1999年アンゴルモアの大王が来る時に君は何してた? プロテインD @meriamen
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