【短編】グリーゼのために ~登山家グリーゼとピアノ講師サラ・バーンズの恋愛~

作者 代々木夜々一

80

27人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

すごい小説!
世界は広い! シアトルはすごい!

主人公のサラは、人生にちょっと斜に構えたようなピアノ講師を生業にする女性。
彼女の暮らすシアトルは、古さと新しさが同居する街。
そこで出会う古ぼけたグランドピアノと、そこから始まる、現代ならでは物語。

短編なんだけど、1編で1万7千字という構成は、Web小説としてはちょっと戸惑うところではあって、読みながら、物語がどこに向かって行くのだろうと惑うのだけれども。
でも、最後まで読んだ読者には、眼前に、壮大なパノラマの絶景が広がります!

★★★ Excellent!!!

代々木氏の
「シンデレラ・ラブ・ストーリー ~秘密の城とガラスの靴の行方~」
でも、その素敵さ素晴らしさにどっぷりハマってしまったのですが
今回の物語も超弩級!

これが1人の人間の知識と脳みそで作られた……??と凄さに唖然としてしまう物語です。
(これは私が物書きなので、その立場としての感想ですね)

私はシアトルに行った事もないし、ピアノのあるバーにも行ったことはない
それでも映像がガンガンと脳内に流れ込んでくる!

代々木氏は
1人で生きている女の強さを表現するのがめちゃくちゃうまい。
それがまたかっこいい芯があって素敵な女性で一発で好きになっちゃうのです。

そこに絡み合う奇跡と、ロマンスが絶妙!!そして壮大!!

これで落ち着くのかと思いきやこれでもか!これでもか!とくる展開を
映画館で見るように体験して頂きたいです!!

読めばわかります!!
オススメです!!

★★★ Excellent!!!

「エリーゼのために」
幼少期にピアノを習っていた人なら誰しもが思う「ありふれた」指練習の曲——むしろ少し飽き飽きするくらい聴き慣れた楽曲が、特別な一曲になるお話です。

オトナになってから分かる甘くない現実の片隅で、ひっそりと生きている大人たちの人生経験を重ねるからこそ響き合うオシャレな恋愛感が素敵です。
決して飾ることはないけれど、何でこんなにオシャレなんだろう。

読後の余韻が出来過ぎなくらいオシャレ。
エリーゼがこんなにオシャレになるなんて。

短編洋画。まさにそんな感じです。

★★★ Excellent!!!

 今ではシリコンバレーなどと並ぶ大企業の本拠地でもあるシアトルで、何となく居心地の悪さを感じているピアノ講師のサラ。
 いつも通りのレッスンを終えたところで、たまたま有名な登山家のグリーゼと出会った彼女は、さらにひょんなことから古いグランドピアノを手に入れ、それをいつも弾かせてもらっているバーに持ち込んだことから、大きな転機が——。

 癖のあるピアノが彼女そっくり、と評されるその凛とした姿や気風の良さが目に浮かぶようで、全体的にどことなく懐かしい雰囲気がありながらも、やがて彼女のピアノがバーの客を巻き込んでいく様子は、本当にその音色まで聞こえてきそうな臨場感でした。

 シンプルな成功譚として終わるのかなと思いきや、そこは舞台のシアトルを活かした現代らしい仕掛けで意表を突かれ、さらには、最後はもうオーソドックスと言っていいほどの直球の大人の恋の結末に頬がゆるゆるになってしまいました。

 テンポの良い会話とちょっと癖のある脇役たち、そして鮮やかな演奏と、最後のシーンがはっきりと目に浮かんでくる映画のような一作でした。

 おすすめです!