第3話

デッスー「こんにちはでーす!」


モノコ「ん、こんにちはデッスー。殆ど毎日訪ねて来てるけど暇なの?」


デッスー「ここに来るのがお仕事なのです! モノコこそ今日も修行ですか?」


モノコ「まあ修行が拙者の趣味みたいなものだからね。食料探しの時以外は大体刀振るか身体を鍛えているよ。要するに拙者も暇なんだ」


デッスー「拙者も暇ですかー……じゃなくです! 私はお仕事なのですよ!」


モノコ「ふうん。拙者とお喋りするのがお仕事なんだね」


デッスー「違うです! とは言い切れない今です……」


モノコ「確かデッスーは死神だったっけ? ここに通ってる事情は前に軽く聞いたけど、元はどういう事してたの?」


デッスー「はいです! 私は死神です! 死神の中でも下っ端ですので、私がやる事は罪人への執行ですね!」


モノコ「デッスーは下っ端なんだ。もっと偉いと何をするの?」


デッスー「偉いとそうですねー、死神長さん達は下っ端に執行の指示を与えるのが主な仕事です。多分。悪さをした神様への執行もやるとかって聞くですよー」


モノコ「神様も悪さしたら怖い目にあうんだね。思ってたより人間界こっちと近いんだ」


デッスー「みんなが人間から見て超常的な力を持つ以外は変わらないと思うですよー。ですから神様が人間界へ遊びに来ても割と馴染めるです」


モノコ「面白いね。そうだ、今度拙者もデッスーの方に連れて行ってよ」


デッスー「それは駄目です! 神様達は気紛れですから、取って食べられちゃうかもしれないですよ!」


モノコ「食べられるのはやだね……そういえばお腹空いたな。デッスーはご飯食べた?」


デッスー「食べてないですー! といっても私一応神ですし、食事はしてもしなくても良かったりするですよ」


モノコ「なにそれ便利だね!? 食べられるなら食べよう。いつも一人で食べてたからね、二人で食べるというだけで非日常なんだよ」


デッスー「それならお付き合いするです! 何を食べるですかー?」


モノコ「実は食料を切らしててね」


デッスー「えぇ! です!」


モノコ「だから今から取りに行こう!」


…………

…………

…………


デッスー「よく知らないですけど、普通は蓄えておくものじゃないんですか?」


モノコ「拙者、その日暮らしな生き方が好きでね。多く取れたとかなら蓄えておくけれど、そのまま食料が尽きるまでは取りに行かない主義なんだ」


デッスー「ものぐさなだけじゃないですか?」


モノコ「あはは、そうかも」


デッスー「今は何を探して歩いてるところなんですか?」


モノコ「そうだなー、その辺に生えてる適当な野草とか……其奴そいつとか、かな」


デッスー「其奴です? ……って、熊さんです!!」


モノコ「この森の熊は気性が荒くてね。話し声なんかが聞こえると積極的に寄ってくるんだ」


デッスー「食べられるですか!?」


モノコ「ん? 手なんか都の方じゃ高級だとかって噂で聞いたよ。拙者は肉がいっぱい取れるから好き」


デッスー「この熊さんは特に大きそうです……立ったら四メートルはありそうですよ」


モノコ「四めえと……なんだって?」


デッスー「あ、メートルじゃ通じないですね。えっと、一寸が三十センチ……? ですので……って熊さん来そうですよ!」


モノコ「そうだ、せっかくだしデッスーやってみる? ほら働く機会だよ!」


デッスー「確かに最近、身体が鈍くなってる気がするです! たまには動かないとですね! 来るです死神の鎌、デスサイズ!」


熊「ぐおおおおお!」


デッスー「てやー!! ズバズバです! これでやったですか!?」


モノコ「っ! 油断しちゃ駄目だ!」


デッスー「え!?」


熊「ぐおおおおおおおお!!!」


デッスー「なんですかこの熊は!! 皮膚に鎌が通ってないですよ!? 動きも速すぎです!」


モノコ「どうもこの一帯の動物は他のとこより強力らしいね。拙者はずっとここに住んでるからよく分からないんだけど」


デッスー「死神と互角なんてもう熊さんじゃないですよ!」


モノコ「お、熊じゃなくて何かな?」


デッスー「え、えっと……超熊、とか……?」


モノコ「なるほど」


デッスー「納得されても困るですよ!? と、とりあえず身の危険を感じて来たので、交代をお願いしたいです!」


モノコ「仕方ないなあ。超熊さん、こっち見て」


熊「ぐお? ぐおっ……」


デッスー「超熊さんが一瞬で……相変わらず人間離れしてるですね」


モノコ「小さい頃からこの森で狩りをやらされてたからね。もう慣れてるよ」


デッスー「強さの一端が見えた気がするです。そういえば、モノコの親は森にいないですか? ずっとこの森に居たならご両親も居るのでは?」


モノコ「うーん、父さんは物心ついた頃には病気で亡くなってたみたいでね、気づいたら母さんからこの森で剣術を叩き込まれていたんだ。その母さんも私が十になる頃には」


デッスー「亡くなった……ですか?」


モノコ「ううん、いなくなったんだ。すごく元気な母さんだったし、どこかで楽しくやってるんじゃないかな。結構自由な人だったし」


デッスー「子供を放って行くなんて自由過ぎるですよ……!?」


モノコ「それじゃ持って帰って食べようか。もうひもじくて腹と背中がくっつきそうだよ」


デッスー「それは大変です!!! 人間はそんな事が起こるですか!? 恐ろしいです……」


モノコ「あ、いや、そういう表現だよ……?」


…………

…………

…………


死神王「なに、剣神がそのような事を?」


大死神長「は、下っ端死神が剣神より直接聞いたそうです」


死神王「神斬りは誤解だったとは言え、神と互角に切り結ぶか……危険だ。これはより執行せねば神界に災いが起こり得るかもしれん」


大死神長「承知しました、おまかせを。我らが死神協会、選りすぐりの精鋭を以って必ずや」

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死神ですが、執行対象が強すぎる @aria-aria-aria

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