第2話

デッスー「真偽の確認……です?」


死神長「ああ、デッスーは信用しているようだが、咄嗟に吐いた嘘という事もあり得る。剣神様に確認しておくべきだ」


デッスー「はっ! 確かにです!」


死神長「疑うのも大事だぞ……? 剣神様はまだゴッド病院に居るようだ。手土産でも持っていくといい。代金は私に付けておけ」


デッスー「感謝です!」


…………

…………

…………


デッスー「失礼しますですー」


剣神「主が話を聞きに来たという死神か?」


デッスー「そうです! これ、お見舞いのケーキです」


剣神「おお! ケーキ!」


デッスー「あ、良かったです! お好きなんですね!」


剣神「べ、別に好きというわけではないぞ。復唱しただけだ」


デッスー「なぜ復唱をしたのです??」


剣神「な、なんでもよかろう。冷蔵庫が空いているからそこに入れておくといい」


デッスー「はーいですー。そいえば、剣神様ってイメージではもっとゴリゴリのマッチョなお爺ちゃんだったんですけど、本当はかわいい女の子だったんですね!」


剣神「お、女の子などではない! これでも神界で上から数えた方がいい歳なのだ。神の外見は精神に由来すると言うが、当てにならんものよ! はっはっは!」


デッスー「そうですよね! 精神通りなら私ももっと美人なお姉さんのハズです!」


剣神「主は合っているのではないか?」


デッスー「剣神様ひどいですー!」


剣神「はっはっは! ところで主、用件は良かったのか?」


デッスー「は、そうです! 剣神様が怪我をした時の事なんですが……」


剣神「け、けけ、けが、怪我をした時の事か?」


デッスー「はいです。神斬りでの怪我という事ですが、実は違うのでは……と聞きに来たのです」


剣神「あ、いや、確かに……神斬りによる怪我では、ない」


デッスー「あ! ですよね、良かったです! やっぱり事故の怪我だったんですね!」


剣神「じじじじじじじ、じ、事故、ではないぞ。あの怪我はだな……えっとだな……」


…………

…………

…………


剣神「久しぶりの人間界楽しいな! 初めて来た土地であったが、大福なるものも美味であった! さて、町で強者つわものの噂を聞いてここの森へ来たものの……本当に人がいるのか? ――っ!?」


モノコ「背後がガラ空きだ。拙者を探していたな? 何者だ」


剣神「ほ、ほほほ、ほう、不意打ちとはいえ、よよよ余の首に刀を当てるとは、ややややるではないか」


モノコ「腕試しの子? 小さいのにこんなとこまで来ちゃ危ないよ」


剣神「子供扱いするな! それに主こそ子供だろう!」


モノコ「子供じゃない。もう十七の立派な大人」


剣神「やはり子供だろう!」


モノコ「とりあえず、実力差は分かったでしょ。もう帰りな。暗くなってきたし森の外まで送ろうか? 近道通ればすぐだよ」


剣神「さ、さっきのは背後からだから無し! だから一旦この刀退けろ! 仕切り直しだ!」


モノコ「しょうがない。少しだけだよ」


剣神「ふぅ……怖かった……」


モノコ「もしかして、その背中に背負ってるおっきな……剣? 鉄塊にしか見えないそれを使うの? よく持ち歩けてるね」


剣神「ふん、こんなもの。人間ぬしらが箸を持つのと変わらぬ。それ!」


モノコ「おおー、すごい! 木の枝振り回すぐらいに軽々と大剣を振り回してる!」


剣神「はっはっは! どうだ怖気付いたか!」


モノコ「うんうん、確かにこれは久しぶりに“楽しめる”かも。それじゃ始めようか」


剣神「ほ、ほう。まだやる気とは良い度胸だ。ではゆくぞ!」


モノコ「あんな剣を持ちながら、見た事の無い速さで拙者の周りを不規則に動き回っている――けれど、目で追える!」


剣神「今だ、そこっ――!?」


モノコ「今までで一番の相手だったよ」


剣神「よ、余の剣が弾き落とされた……?」


モノコ「ほら、大きいだけあって剣は無事みたいだね。お返しするよ」


剣神「っ……! ふえぇぇぇん!!」


モノコ「あ、あれ……?」


剣神「ばーかばーか! 偶々手が滑ったんだ! 今度は余が勝つからなー!」


モノコ「あ、泣きながら走ったら転んじゃ……あっ」


剣神「け、剣がー……痛い……」


モノコ「えっと……横一文字にお腹に切り傷出来てるけど大丈夫……?」


剣神「よ、余は剣神だから……これぐらいは……って見るなー! もう余、おうち帰る!」


…………

…………

…………


デッスー「事故じゃなかったんですかー?」


剣神「そ、そうだ! あ、あれはだな……せ、切腹での傷だったのだ!」


デッスー「切腹です?」


剣神「ああそうだ。サンコクの国に伝わる行為でな。余はあの侍と戦ったが負け……ではなく引き分けたのだ!」


デッスー「引き分けだったのですか!」


剣神「そ、その通りだ。神が人如きに負け……ではなく引き分けるなど起こってはならぬ事。余は自らを戒める為に腹を斬ったのだ!」


デッスー「なんとです! 流石は剣神様です! 私なんて負けたのに恥ずかしげもなくノコノコ帰ってきて……い、今ここで私も腹を切った方がいいですか!?」


剣神「お、落ち着け! 余は切腹により周りに迷惑を掛けてしまっているだろう? 主まで同じ事をする必要はない」


デッスー「は! 考え及ばずです……! 剣神様は思慮深いです!」


剣神「は、はは! そ、そうであろう! とりあえず、まあ。そういう話だったわけだ」


デッスー「お話聞けて良かったです! ありがとうございましたです! またです!」


剣神「うむ、またな」




剣神「ふふふ、ケーキ食べよっ」


…………

…………

…………


デッスー「剣神様とお話したんですけど、

本当は勝負引き分けだったんですか?」


モノコ「え……? あー、うん。実はそうだったんだよね」


デッスー「話盛っちゃ駄目ですよー」


モノコ「うんうん、その通りだ。ごめんね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る