死神ですが、執行対象が強すぎる

@aria-aria-aria

第1話

「死神長、執行完了しましたですー!」


死神長「ほほう、今回も早かったな。流石だぞデッスー」


デッスー「いえいえ! 執行対象が人間でしたし当然ですよ! 神様達への執行でしたらともかく、人間なんかには私みたいな下っぱ死神でも余裕です!」


死神長「ははは、謙遜するな。ところで、さっき急な仕事が入ってきてな。早く終わらせてくれた所悪いが、頼まれてくれんか?」


デッスー「やりますですよー! 急に入って来たというのは、どういう案件なんですか?」


死神長「それがな。詳しい事はまだ分からんが、人間による神斬りがあったらしいんだ。まあどうせ神の後ろから不意打ちでバッサリとかだろう」


デッスー「それは許せませんですね! その神様の仇はおまかせです! どちらに向かえばいいですか!?」


死神長「サンホンという国の侍のようだ。小さい国だからとりあえず降りれば後は、対象に付けられた罪人の刻印で見つけられるだろう」


デッスー「了解でっす! ではいざ出発!!」


…………

…………

…………


デッスー「えっと……確かこの辺りから刻印の気配がするんですが……っ!?」


侍「背後がガラ空きだ。拙者を探していたな? 何者だ」


デッスー「あわわわわわわ、かかか刀が首ににににに」


侍「ちょっと、あんまり震えると刀が首に当た…あっ」


デッスー「痛い! 血がツーってなってるの感じるです!!」


侍「ま、待って、あんまり興奮するとまた危ないから!」


デッスー「ひぃー! わー! ですー!」


侍「ほら、刀退けるから! 落ち着いて?」


デッスー「おのれー! 私に刀傷を付けるとはまさに神斬りです! 許しませんよー!」


侍「髪切り? よく分からないけど、やるなら相手になるよ」


デッスー「ふふふ、人と死神ではスペックが違うのでーす。瞬く間に執行されなさーい!」


侍「うお、すごい。さっきまで手ぶらだったのに急に大きな鎌が」


デッスー「てやー!」


侍「速い、明らかに人間の動きじゃない――けれど、遅い」


デッスー「……へ? 私の鎌が飛んでいったでーす……?」


侍「実力差は分かったかな? もう帰りな」


デッスー「うう……しかし神様の仇が……」


侍「神様……? それってもしかして昨日戦った人のことかな」


デッスー「ふぇ?」


侍「確か剣神って名乗っててね。通り名だと思ってたけどもしかして本当に神様だったの? なんだかとんでもない動きしてたし」


デッスー「け、剣神様と言えば神界でも指折りの強さと言われる神様……それを斬ったですか!?」


侍「? 斬ってないよ? 急に勝負を挑まれたから、さっきみたいに持ってた剣を弾き飛ばしてね。拾って返したんだけど、急に走り出したと思ったら転んじゃって、その時自分の剣が運悪く……」


デッスー「Oh……」


侍「拙者なんかまずいのかな?」


デッスー「えっと……事故とは言え一度、執行対象になりますと取下は難しいですので……また来ちゃうかもです」


侍「そっか……ご迷惑かけるね。折角だし名前でも教え合おっか。何度も会うなら仲良い方が楽しいしさ」


デッスー「へ? そ、そうですね?」


侍「拙者の名前はモノコ」


デッスー「私はデッスーです!」


侍「なるほどですです言うからデッスーか」


デッスー「違いますです! 西の国で死を意味する言葉のデスから取ってデッスー! です!」


侍「そうなんだ。ちなみに拙者はモノノフの子でモノコ」


デッスー「安直です!」


侍「お互いにね」


デッスー「ふふ、確かにです!」


侍「あはは、仲良くなれそうでよかった」


デッスー「ではそろそろ帰りますです。一応、死神長には事故の説明をしてみますが、期待はしないでくださいです」


侍「気にしないで。友達増えて拙者も嬉しいよ」


デッスー「人間の友達、初めてです……ではまた! です!」


…………

…………

…………


死神長「お帰りデッスー。珍しく時間が少し掛かったな」


デッスー「それが死神長、今回は仕事を完了出来ていないです」


死神長「なんだって? ……! その首の傷、まさか神斬りの仕業か!?」


デッスー「へ? あ、いやこれはちが」


死神長「許さんぞ神斬り! よもや私の部下にまで手を掛けるとは!」


デッスー「いや、あのそうじゃなくて、話が」


死神長「ああ分かってる。執行対象としての重要度の格上げだな。すぐに大死神長に掛け合ってこよう!」


デッスー「えっ」


死神長「デッスーはきちんと傷を治すまで休暇でいいぞ! では行ってくる!」


デッスー「あっ……」


…………

…………

…………


死神長「ん? 勘違い?」


デッスー「私の首もですし、剣神様も事故だったようです……」


死神長「なんてこった……柄にもなく全力で大死神長を説得して、迅速な重要度の格上げが決まってしまった」


デッスー「どうにかならないですか……?」


死神長「もはや執行の取下は不可能な状態となっているが……マシな方向でいくならば……」


デッスー「なんです?」


死神長「お前が執行対象の元へ通い続けろ。相手は所詮人間という事もあり、死神達はその執行対象を軽く重要視はしても危険視はしていないだろう。死神の送りはするが、誰を送っても同じと考えられているはず」


デッスー「つまり私が行き続けるのが一番マシ……?」


死神長「このチームの仕事の割り振りは私に一任されているし、誤魔化しはしやすいだろう。仕事を成功しないからお前の昇進はないだろうが……まあお前は強い死神ではないし、元々ない道だ。気にするな」


デッスー「なんだか悲しい事を言われた気がするです」


こうして、デッスーがモノコの元へ定期的に通う事が決まったのだった。

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