第28話 エピローグ


 ついに二人の姿が蒼の中に吸い込まれ、見えなくなった後も、レルルはしばらくその場所に立っていた。


 太陽は完全に登り、全天には雲はなく、風はいつもより乾いていて、眼下の景色は珍しく霧一つ、靄一つかかっていない。


 今のレルルにとってはすべてが新鮮で、すべてが新しく、鮮烈だった。

 あまりに鮮烈に過ぎて、かえって心が空っぽに感じられるほどに。

 

 その空っぽになった心の中に一つ、何かが引っかかっているように感じる。

 言葉なのか、感情なのか。レルル自身にも、よくわからないものだった。


 だから、


 <……繙きましょう>


 そっと、“言霊”を風に乗せる。自分の心へとかけた、初めてのシレイ。

 

 心の中に引っかかっていた言の葉が、そっと口をついて零れ落ちる。


 どういう意味かは、レルルにも分からなかった。

 ただ、きっと善い言葉に違いない。そう思った。


 ――曰く、


 “天は上と人とをつなぎ”


 “悪は大いなる善を呼び”


 “愛は他に宿り世を満たす”  と。





<おしまい>

 


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天使と悪魔がAIしてる 譚タリヲン @kgs

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