あじさい
牧 鏡八
あじさい
傘と、雨粒と、雨雲が
幾重にも、
ただ一人立ち尽くす
私の頭を押さえつけてくる
あまりの重みに耐えかねて
私の首は、自然と下を向いた……
向いた先に見て、はっとする
大きく美しいあじさいの花ひとつ
赤や青や紫の
星々が身を寄せ合って咲いている
激しく打ちつける雨に向かって
凛と誇り高く
斜めに吹きつける風に向かって
凛と胸を張り
小さきものたちが
身を寄せ合って、ひとつに咲いている
小さなちいさな色の粒が肩を組み
万華鏡のように集まって
大きなおおきなあじさいの花を
雨に逆らって咲かしている
私も、そうなのかもしれない――
私は一人では生きていけない
一人では美しく咲くことはできない
誰もが同じだ
私は誰かに支えられ
また、私も誰かを支えて
支えられ、支え、支え合って
大きなおおきな花を咲かすのだ――
心の底から気が突き上がり
傘と雨粒と雨雲を吹き飛ばす
もう目線は下を向かず
ただまっすぐに前を見ている
顔を上げて
一歩踏み出そう
水溜りを踏んで
この一歩は、誰かの支えになるから
支え、支えられ、支え合って
大きく美しいあじさいを咲かせよう
あじさい 牧 鏡八 @Makiron_II
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