本作は、第二次世界大戦後の敗戦国プロイスを舞台に、作者さんの豊富な知識に支えられた迫力満点の戦車戦が繰り広げられる本格戦記モノです。
物語の始まりは、天才技師と後にSkorpionと名付けられる新型の超重量戦車。若き将軍マンシュタインは彼女に誘われ、やがて連合軍を相手に戦争を繰り広げることになります。
本作の魅力はリアルな戦争描写や飽きさせないストーリーの流れなど数多いですが、私からひとつ語るとしたら、なんといってもキャラ同士のオシャレで理知的なやりとりです!それぞれの個性が現れた発言、戦場で飛び交うブラックジョーク(「連合王国の紳士は、列には並ぶが、約束は守らない」とか。三枚舌外交は有名ですよね)、そしてところどころにドイツ語やフランス語、英語(ちょっとロシア語も)で書かれた言葉のかっこよさといったら!キャラの魅力あふれた適度に皮肉な言い回しには痺れます。私は近代兵器には詳しくありませんが、そんな描写を追っているだけで十分に楽しめました。
たくさんの人におススメしたいと思える、最高の戦記モノです。戦車や歴史に詳しくない人でも、ぜひ一読してほしいと思います。
読み始めてすぐに感じたのは、この重厚な設定、題材を筆者様はどう料理するのだろうと言うことです。
ですがだんだんと読み進めていく内に気がつくとあっという間に世界観に引き込まれていて、物語の緩急がハッキリしているので、緩の時は一つ一つのセリフを噛み締めて、急の部分は脳内に映像を流す様にスルスルと入ってきます。
特にシモンとフレッド、マリアが織り成す小洒落たノスタルジックな会話劇はまるで有名作家の洋書を読んでいる様な完成度を感じさせてくれます。
読了後『本を読んだ!』という満足感に浸る事の出来る素敵な物語です。
是非オススメですので一読されては如何でしょうか。