第4話
死の前夜、果たして彼女は自身の肉体を受け入れただろうか。生きているだけで疲れ切ってしまった肉体を、死の、その向こう側へ連れ立つことを。
「ね、私どうせ死ぬのだったら朝がいいわ」
「どうして?」
「太陽が昇ってくるでしょう。そうして涼しい風が吹くでしょう。私の魂は太陽に焼かれるの。
あなたのもとに。
……彼女にはもう、肉体など無いに等しいものだった。
もし肉体が大切だったなら、彼女はもっと早い段階で救われていたに違いない。しかし敬虔な彼女は、
なら、彼女の魂は救われたのか。現実を諦めたその思慕は、理想によって報われたのか。
彼女の声を聞いたのは、死の前夜だ。「夢を見ていたい」と、その切ない声を。だがその直後に死んだのかは知らない。彼女が希望通り朝に死ぬことができたのか、私は誰にも訊かなかった。
(白く
理由はないが、そうだろうと思った。
※
読経は終わりを迎えようとしていた。遂に火葬が始まる。彼女は肥えた身体を捨て、すっかり空虚な遺骨となる。
ただ、あの棺の中に、もう骨は無いだろうと思われた。
彼女の内に隠されていた骨は、彼女の秘密そのものだ。明かされることの無かった秘密は、
焼いたくらいで手に入るものか。骨は彼女のものなのだから無くなって当然だ。
支えを失った皮膚や内臓は、とろとろと、腐った
そう思い描くと小気味が良かった。何だか私の身体まで透明に固まって、彼女の下へ行けるとさえ思えた。
そうして辿り着いた先では、私の凝り固まった結合は柔らかく
そのような確信は、私の卑小な
前夜 おり。 @user_hyfh2558
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