序盤から続く重く暗いストーリーに顔を顰めながらも夢中になって読み進めました。
虐げられた主人公が成功し周りを見返す。ざまぁ ではそのカタルシスこそ読者が求めるものです。しかし本作はそう単純な感想を抱かせてはくれません。
蔑まれながらも努力し己を律する主人公。気高く真っ直ぐな言動は熱い感情と同時に痛ましさを感じさせます。そして彼の気高さを知る人間ほど歪みは避けられない。
暗い予感を感じながらも登場人物の幸せを願わずにはいられません。
まさに深い奈落を見ているようです。その先に光があるのかは、まだ分かりません。
一読すればきっとあなたも続きを待ち望むようになりますよ。
昨今のWeb作品は主人公が強くて、何でも主人公の強さで解決してしまう…そう言ったものが量産されているように感じます。
勿論そう言った作品は爽快感があって、私もよく愛読していますが、傾向的に主人公の悩みが少なく、それ故に内面に対する彫り込みが少々物足りなく感じてしまうことが多いのです。
この作品は主人公には強さがありますが、その強さが真に発揮されるまで、主人公の内面を窺い知ることができる素晴らしい作品です。
主人公が何をすべきか考え、確固たる芯に基づいて行動を起こす。
その気高さに思わず、没頭して読み込んでしまいました。
こうした作品を読ませて頂き、心から感謝いたします。