「家なき子」のような苦労ドラマかと思いながら

(第二部了までの感想)
いわゆる「ざまぁ系」と期待して読んだがまさか25万字近くも迫害され続けるとは驚いてしまった。

煤まみれどころか読者がストレスまみれではないかと思いながらも、読み続けてしまったのはその重厚で精密な描写に引っぱられてのことだ。アニメやドラマであったらあまりにゲス過ぎる役柄の演者に同情してしまって話が入ってこないほど人間サイドの下劣さが徹底している。小説だからこそ気にせずに入り込むことができたのはメディアの特性を上手く使っていると思った。

古くは「おしん」や「フランダースの犬」「家なき子」など数々の不当な仕打ちに耐えるドラマが日本で人気を博してきた。被虐に耐え続ける主人公へ感情移入することで悲劇の中にある麻薬的な気持ちよさを味わうという仕掛けの存在も無視はできない。途中までこの作者の書きたいことは実はそちらだったのではないかと勘ぐってしまったほどに延々と蔑まれ続ける。

現時点で第二部を終えて文庫本で言えば2冊分。ようやく剣を抜いてターニングポイントを過ぎたように感じる。この先これまで降り積もったフラストレーションを振り払うようなカタルシスにつながるのか。はたまた一時的な勝利から再び苦しい展開に追い詰められるのか。多くの読者は前者を期待してるだろうが、後者だとしてもファンタジー版の苦労ドラマとして一貫しているし面白くなりそうだ。

ただ一つ後悔があるとすれば完結してから読み始めるべきだったとも思う。
YoutubeやKindleインディーズ等と異なりまとまった収益につながらないネット小説界隈において、これは傑作になるだろうと読んでいた作品が途中放棄されてしまうケースは枚挙にいとまがない。作者さんのメッセージからは少々ナイーブなところも感じ取れるので、あまり焦らずマイペースに自分の作品をつむいでいってほしいと思うのは余計なお世話か。

ちなみに騎士の鎧を身に着けて特殊な剣で戦うシーンはダークソウルやベルセルクをイメージしながら読んでいたが皆はどうだろう。