茶系

第4話 褐色(かっしょく)

 褐色は、やや黒みを帯びた茶色です。呼び方は「かっしょく」ですが、「かちいろ」や「かちんいろ」、「かついろ」の読み方だと、まったく別の色になるので注意です。

 褐(かつ)の字は、衣偏を除くと葛の茎から取った繊維で作った衣料の意をもっています。ごわごわした粗末な衣服のことで、そこからそんな衣服を着る身分の低い人のことになって、さらにその衣服の黒ずんだ茶色のことをになったとのことです。

 やがてそのような樹皮を原料とする繊維の総称となって、麻から作った衣料、それで編んだ靴下にあてられるようになりました。

 これらの繊維はいずれも樹皮の表面にタンニン酸の色をそのままもっていて、茶系の色がついているため、褐色になったようです。

 中世にはお茶を飲む習慣が定着すると、「茶染」もしくは、「茶色」という色名が登場します。

 そして本来の褐色には、「茶褐色」と呼ぶようになったそうです。

 黄みのある茶色は、黄褐色、赤みがある茶色が赤褐色となります。

 小説では、女性の日焼けした表現に使われます。男性の場合は、赤銅色(しゃくどういろ)で表現されます。

 英語で似た色はあるかと探したのですが、私の持っている本には、ありませんでした。

 他に何かないか探したところ、イタリアの色で、ブルーノ・ヴァン・ダイクがありました。英語では、ヴァン・ダイク・ブラウン。画家のヴァン・ダイクが好んで使用した茶色です。

 ヴァン・ダイクは、17世紀のフランドルの画家。1620年、イギリス王ジェームズ1世に招かれてロンドンに渡るも、すぐにイタリアへ旅立って、ヴェネチア派の画家ティツィアーノの影響を強く受けました。

 炭鉱から採掘される褐炭を精製した茶褐色の絵具を使っていたため、その絵具に彼の名前がつきました。

 茶褐色では、ロッスィッチョ。英語では、ラセット・ブラウンです。

 ロッスィッチョは、赤みがかったという意味で、赤みを帯びた茶褐色です。古い色名でもあります。

 赤褐色や赤毛をあらわしますが、英語の色名では1562年には赤味の茶系統の色をあらわすようになったといわれています。

 赤褐色では、カスターノ・ラマート。英語の色名では、オーバーン・ブラウン。

 カスターノは、「栗色の」「茶色の」、ラマートは「銅張り」「銅色の」の意味で、赤褐色をいいます。

 英語の色名のオーバーンは、髪の毛などが赤褐色のことをいいます。

 日本の色名では、赤褐色の他には、鳶色が近い色です。鳶の羽のような、濃い褐色の色です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

日本の伝統色辞典 柊ふわり @hiiragi-fuwari

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ