最終話 全て終わり
その後は俺は警察に取り押さえられ、全てが終わった──。
自分がやった過ち、あの時、俺は見て見ぬ振りをしていれば全てがなかったのだ。
そんなことを考えると胸が痛い。
それから、十年後が過ぎた──。
あの後、俺は少年刑務所で二年を過ごし、俺は高校をもう一度、一から受け、大学へ行き、今はサラリーマンとして生きている。
「耕平くん大好き!!」と一人の女性が抱きつく。
彼女の名前は斎藤祥子。
俺と同じ会社に勤める二個下の後輩だ。
「そういうのは大丈夫だから……」
彼女は俺に好意があるらしい。
顔はドストライクだし、身体も一級品の彼女を嫌う理由なんてない。
……いいや、あるのかもしれない。
「ぷ〜、先輩、せっかくカッコいいのに!! もっと、男気だした方がいいですよ!!」
「ごめんよ、俺は彼女とかそういうのは作らないと決めたんだ……」
そう、俺はあの日、誓った……俺と関わった女は絶対に不幸になるということから、もう二度と女との関係は最低限にすることを──。
「また、それですか!! こんな私でもダメなんですね!!」
「ああ、ダメだ」
きっと、これが俺がこれから背負わなければならない罪なのだということを──。
仕事が終わり、俺は夜の公園へやってきた。
時刻は夜八時十五分。
仕事は七時五十分には必ず終わるという、定時がある。
俺はベンチに座り、缶コーヒーを飲みながら、空を見上げた──。
雲ひとつなく、星が綺麗だ。
本当に俺は惨めだな……。
ふと、そんなことを思うと目から涙が溢れ出す。
「はは、十年ぶりに涙が出てくるな……」
これは、あの日泣かなかった涙だ。
一度、出たものは戻らずにどんどんと溢れ出す。
「今更、後悔したって遅いのに」
十年前、俺が何をしたかったのか今になってはわからない。
いいや、そもそもわからなかったのかもしれない。
ただ、俺は一人の女を取られただけなのに、変に怒っていただけなのかもしれない。
そもそも、女なんてこの世界にたくさんいるのに。
たかが、うららを取られただけで何を俺はムキになっていたんだよ……。
「あの時、俺が見て見ぬふりをしていれば今も俺は……あいつらと……」
後悔してももう遅いことぐらい知っている。
全てを失い、初めて気付いたことがある。
──それは、人間関係なんて所詮ボロボロのツギハギであることを。
そのツギハギを触れば簡単に全てが壊れることを。
それはまるで、ドミノのように──。
どんなに積み重ねてきても一つが壊れればあとは勝手に壊れていくんだと──。
あいつらに会いたい……今度は普通に友達として……桜と遊びたい。
うららと翔太が裏で何をしていてもいいから、また……あいつらに会いたい。
「ふん、そんなこと言ったって何も変わらないんだけど」
十二月に入り、とても肌寒い中、俺は上着を脱ぎ、ワイシャツになる。
すると、そこに──。
「耕平くん、やっぱり、今日もここに……今年は一段と寒いらしいですよ。だから、しっかり上着を着てください──」
そう言いながら、俺に近づいてくる後輩。
ああ、知ってるよ……俺ばっかり、楽しくいちゃあダメなことぐらいさ。
全部、わかってるよ。
本来、俺がお前たちの人間関係を潰してしまったことぐらい──。
「ほら、着てください!!」とベンチに置いた上着を手に取って俺に渡す後輩。
だから、俺は人間関係なんて断ち切らなきゃいけないんだ。
「わるい、ありがとう──」
だから、彼女は俺に邪魔だ──。
グサっ──。
だから、俺は彼女の腹部にナイフを刺した。
「先輩っ──?」
だから、俺はずっと一人がいい。
全て、なくていい。
それが俺のできるせめてもの償いだから──。
突如、雪が降り始める。
ああ、今年は、ホワイトクリスマスになりそうだ。
ああ、翔太と遊びたい。
ああ、うららとエッチしたい。
ああ、桜とエッチしたい。
ああ、もっと人を殺したい。
──────────エンド──────────
幼馴染の先輩を親友に寝取られたのであなたの彼女を寝取ります さい @Sai31
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