第9話

 楓は、見知らぬところにいた。後ろ手に縛られ、猿ぐつわを咬まされていた。楓の他に、三人の女が同じように縛られ、猿ぐつわをされてそばにいた。項垂れ、諦め、涙をぽろぽろと流して。

(ああ、なぜ、こんなことになるの?)

 楓もまた、失意の底にいた。逃げられない。

 お店に戻り、店長に言われた。

"もう、お店で働かなくてもいいんだよ。八木さんが楓をお買い上げになったんだ"

 そして、いきなり眠らされた。薬の染みた布を嗅がされて。

 気づくとここにいた。後ろ手に縛られ、猿ぐつわをされて。

「おまえたちは、今から外国に送られる船に乗せられるんだ」

 そんな!?

 慌ててもどうにもならない。頑丈な檻に一人ずつ閉じ込められた。大きな布をすっぽり被せられた。

 やがて吊り上げられて、船底に積まれた。

 揺れる、揺れる。船は洋上に出ていった。

楓は、どこへ連れていかれるのだろう。はたして戻れるのだろうか。

 八木は、どこに居るのか、楓の前に姿を見せなかった。


「店長、また頼むよ。新しく入ったむつみがいいな」

 体験入店を経て、今日が初日の元キャビンアテンダント、二十六歳。M女は初めてだが、プライベートでの経験が多少あった。セミロングの黒髪が、八木の目を惹いた。

「むつみさん、明日、八木様からご指名です。プレイ経験豊富な方だから、気に入られるようにしっかりね。長く指名していただけるかも知れないから」

「はい」

              おわり

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

奴隷っ娘 沼田くん @04920268

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ