山手線おんな
ブンカブ
山手線おんな
「それじゃ君は犯行の一部始終を見ていたんだね?」
駅の構内で警官の質問にあっていたのは、都内の大学に通う女の子だった。
「はい、それはもう、あますところなく全て」
この日、JR
「おかしな男だと思っていたんです。挙動が不審でしたし。だから私、彼の後を
こっそり追ったんです」
彼女は満面の笑顔で答えた。
「すばらしい洞察力だ! 君の勇気は市民の模範だよ。でも、その“おかしな男”が 入ってきた駅から出て行くまで山手線ほぼ一周だ。もしも君が男より早く降りていたらと思うと––––」
警官は思わず感心しつつも、あり得たかもしれない最悪の事態に体を震わせた。
「いえいえ、それはありえませんよ〜」
彼女はニッコリと微笑むと言葉を続ける。
「だって私、さっきので山手線12周目ですから」
さて、本当の不審人物はどっちだったのだろうか。
《終わり》
山手線おんな ブンカブ @bunkabu
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