バブみ道日丿宮組

お題:熱い絶望 制限時間:15分

 思い出って懐かしさもあって、辛くもある。

「……久しぶりだね」

 かつて一緒の夢を見てた友だちのお墓にそれぞれお線香。最近はやりの甘い匂いがするタイプ。匂いだけは感じられるかもしれないので買ってみたけど、花粉症だった友だちは苦手だったかもしれない。

「私だけ夢が叶って、みんなは大地に帰ってしまって。正直言えば信じられないよ」

 才能なんてない。私よりも友だちの方がいい個性を持ってた。

 唯一私にできることといえば、気配りと記憶。先輩クリエイターの先回りをすることしかできない。

「今ね原画をやらせてもらってるの。原画はそっちのがうまったよね。私に落書きとかよく言ってくれたのを未だに覚えてるよ」

 それが本心ではなく、褒めてくれたことだというのはわかってる。誰も傷つかず夢を叶えようと集まったのが私たち。お互いの邪魔をせずに後押しする。そんな関係でいようとルールを決めた。

 けれど、みんなで決めた高校の卒業旅行で私以外が……。

「あは、ごめんね。泣くつもりなんてなかった……のに、うん。そうだね」

 泣きたい時は泣けとも言われたことを覚えてる。目を閉じれば、あのときの景色もイラストとなって思い浮かぶ。私と友だちだけの記憶。

「あ、あとね。結婚することになったの。相手は知ってる通りあの人。今日も彼が運転して連れてきてくれた。ここわりと駅から遠いからね、心配してくれたの」

 風がふゅるりと吹いた。

 それがまるで友だちが呆れてるように聞こえたので、

「のろけ話はするなって? 嫌だよ。私一番にみんなに話したいって昔言ってたでしょ。それにーー」

 この話をすれば、結婚式当日に友だちがきてくれてるかもしれない。席は用意できないけれど、天から私たちを祝福してくれるかもしれない。

「ーーそろそろいいか。いや君たちの会話の邪魔をするわけじゃないからさ」

 声に振り返れば、彼が頭をかきながらこちらに歩いてきてた。

「打ち合わせだよね。うん、わかってる」

 これからの私たちの生活のためのお話。

「じゃぁみんなまた今度ね。次はたぶん結婚式の日付の報告になると思うから」

 私はそういって彼の手を握り、友だちが眠るお墓から離れてた。

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バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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