א話:霊長目真猿亜目狭鼻下目ヒト上科ヒト科作家属
――本書を親愛なる君、サミーに捧ぐ。
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――――――― 1 ―――――――
政治的なメッセージで騒ぐ者、陰謀論を語る者、退屈で不自由な
ヴィールスそのものの感染力より、
……ヴィールスではないか。
ドイツ語発音に基づくカタカナ表記は最早、一般的ではない。
ウイルス、――か。
どうしても、あの頃の記憶が
勿論、全てが、じゃない。
断片的。
無作為に、脈絡もなく、
不意に、洗面所の鏡で汚いその
――
額の皺が思ったよりも深い。
それ以上に、目の下の
睡眠不足という訳じゃない。純粋に、ごく単純にコラーゲンやヒアルロン酸が減少しているのか。
そうか、これが加齢ってヤツだ。
それもその
何者にも
いや、唯の老い
一体、いつからわたしは、
わたしにも夢があった――あった筈だ、恐らくは。
今となっては、それがどんなものだったのか、なんだったのか、憶えていやしない。
精々、
それにしても――
嗚呼、その原因は分かっている。
別にこれは年を食ったからって訳じゃない。まぁ、年齢と全く関係ないのかって問われると、そうとは云い切れんのだが、少なくともこれには明確な要因がある。
誰かに興味を持って貰うつもりはないし、哀れみを乞うつもりは毛頭ない。
敢えて云うのであれば、淋しくなった頭髪だけでも分けて欲しいものだが。
書斎に戻る。
書斎とは云っても、それは子供部屋。
何十年も前から使っている、わたしの、わたしだけの固有空間。
祖父母も父母も兄弟もいない。勿論、妻も。
わたしは元来、荷物が少ないんだ。殆どのものは書斎で事足りる。
単に、物欲が乏しい。
無論、子供の頃には色々集めていたとも。
綺麗な石ころや古銭、漫画本やプラモデル、モデルガンやナイフ、化石に昆虫の標本、ギターにCD、Blu-ray他、ごく一般的な男性と
――だが、
今ある興味は唯一つ、物書き。
ペンと紙切れがあれば、いや、パソコン一つあれば、それでいい。ものを書くだけ、それしか興味がない。
物欲がなくなったのは、“
その品々を見る度に思い出すんだ、その時の事を。
つまり、美化、する。
何でもない凡庸な過去の思い出を、
そう、精神の老化。
肉体の老化は免れようもない。せめて、心だけでも若々しくありたい。
だから
蒐集した個々の品々は沈黙した
文書は、文章は、テキストは、言語は、わたしの記憶と記録とを完全な迄に
コレクションがわたしの記憶を奪うのに対し、文章を書く行為はわたしの記録を与えてくれる。
そう、わたしは生まれ乍らの作家なのだ!
例えるのなら、わたしは生物学的には
背徳のパラドクス ~ AIをとりもどせ!! ~ 武論斗 @marianoel
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