自分を嫌いなあなたが好き

てふてふ

第1話

「綺麗な手だね」

そう褒めると嬉しそうにはにかんでいた彼女が、今は泣いている。



別に、手に執着があるわけじゃなかった。


「手はよく褒められるの」と嬉しそうに話すから、「ほんとだ。綺麗だね」と褒めた。

ただ、彼女に触れたいだけなのに、「この手が好き」と理由をつけて、手を握ったり、指を絡ませた。


指の先に口づけをしてから、少しだけ口に含んで、舌でなぞる。

「食べないでね」

「食べたいけどな。」

そういうと困ったように「本当にこの手が好きだねー」と笑うのが可愛い。


僕が好きなのは手ではないけれど。


「ちょうだい?」

いつも通り、彼女の手をいじくりまわしながら、気づいたらそう強請っていた。

驚いた顔をした後に眉間に皺を寄せながら

「ぇー、こわーい。やだよ」

と手を振り払われる。

振り払われた手をもう一度掴む。

ビクッと体を震わせて、こちらを覗き込んでくる。


あぁ、今まで手を掴んだことは無かったな。


困惑する顔も可愛らしくて、もう一度

「ちょうだい?」と言う。

「…無理」

「そう、じゃぁ、いらない」

そう言って帰ろうとすると、びっくりしたように目を見開いて、ポロポロ泣き出してしまった。

泣き顔が可愛い。

「ごめんごめん。冗談だよ」

と抱き締めた。



いつも通り、指をなぞって、「綺麗」と褒める。

彼女は怪訝な顔をしながら「ありがとう」とそっけなく答えた。

何かを我慢するその表情が好きだった。

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自分を嫌いなあなたが好き てふてふ @tehutehu1215

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