誇張しすぎた小学生達
樽尾太郎
第1話小学生達
大人は小学生達を舐めすぎている。やれ小学生は弱いだの、やれ小学生は可愛いだの、やれ小学生は親の保護が無いと何も決められないだの、全く小学生を理解していない。
小学生という生き物は自由に葛藤を抱え、自由に選択でき、自由に遊べる。
そんな生き物なのだ。
時は学校が終わり静寂となった校庭、その校庭を駆け抜ける数人の小学四年生、その後ろからはほぼ同じ背丈のはずなのに謎の威圧感を感じる小学生がその小学四年生達を追いかけていた。
「くそ!追いかけてきやがった!」
「くっそ!こっちにもいやがるでござる」
「どこもかしこも五年生ばかり、一体どこに逃げればいいのだ·····」
「残りの人数は何人だ!?」
「俺達だけだ、後は全員捕まっちまった」
「へーいヘーい、貴様らにもう逃げ場はないぜぇ」
「お前らがァ俺らに勝つなんて無理だったんだよォ」
「あはは、滑稽過ぎて笑っちゃうね」
いつの間にか小学生四年生達は五年生に囲まれていた。
この小学生達が今行っているのは五年生七人対四年生十二人のケイドロである。四年生が泥棒で五年生が警察として、泥棒を檻の中に閉じ込めていくというものである。
数だけ見ると四年生の方が不利のように思えるがこのゲームは制限時間が設けられており、七分間警察から逃げ切れば泥棒側の勝利となる。
そしてドロケイの一番の特徴として泥棒は檻に捕まっている仲間に触ることで解放することが出来る。
これがドロケイの基本ルールである。
「絶対絶命だな」
「どうする?あっちには、学校一足の早い、俊足王俊介がいるでござるよ」
「くっそ、一体どうすれば!?」
「ここは僕が行くのだ」
そして一人の漢が立ち上がった。頭は坊主、しかし、それを一切感じさせない貫禄が彼にはあった、彼の名は太刀川日向。
この四年生の中で最も体の面積が広い男である。
「おい!日向!なんでお前が!?」
「僕は皆に沢山迷惑かけちまったのだ、ここでカッコつけねーで、俺はこれから先どうやって生きればいいのだ」
「日向やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
「強く生きろよ」
そして、日向は最後に生き残っている四年生に笑顔を残し、その巨漢を武器に五年生の集団へと走り出した。
「あふん」
そして無惨にも日向は警察である五年生にとり囲まれ一瞬にして捕まってしまった。
「逃げるぞ!今平!」
「けど!けど日向が!」
「あいつの死を無駄にする気か!俺たちは今この瞬間この一秒を逃げることに使わなくちゃならねぇんだ!」
今平と呼ばれた一見普通の男の子は特段味方意識が強かった。だからだろう散っていった仲間である日向が捕まったという事実を受け入れられなかったのは。
しかし、今はそんなことを言っている場合ではない、今平は日向以外の味方である、データ分析のプロフェッショナル、データマン石塚と飛行機を作ることに関しては誰にも負けない、繊細飛行機野郎大空翔に引っ張られていた。
「クソ!時間がないでござる、早く逃げるぞでござるよ今平殿!」
痺れを切らしたデータマン石塚は無理やり今平を引っ張り、その場から逃げ出す。
「逃がすと思った?」
しかし、絶望はすぐ側まで来ていたのだ。
逃げる三人の目の前に砂埃を上げながら現れたのは髪がマッシュでどこかナルシスト臭のする、学校一のモテ男であり、学校一の足の速さも兼ね備えている、俊足王俊介であった。
「俺のスピードから逃げられると思うなよ」
「「ちくしょぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」
そして三人は日向の奮闘虚しく、俊介によって一瞬にして捕まってしまった。
これは馬鹿であほでどうしようもないこんな小学生達が送る、汗と涙が飛び交う小学生だけの青春の物語である。
誇張しすぎた小学生達 樽尾太郎 @tarumiryuta
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