第3話
それから、本条吹雪は山寺明日香と一緒の個室に入ってナプキンの使い方を教えて、2人で一緒にバスケ部に顔を出して、キャプテンと顧問に事情を説明してから帰路についた。
「そう言えば、明日香めっちゃ泣いてたね。そんなに辛かったの?」
「違うの。実はね、初潮迎えられて嬉しくて泣いてたんだ。」
「えっ!?どうして?」
「ほら、私ってそこら辺の男子より背が高くて運動できるじゃない。」
「なにそれ。自慢?」
「わたしは女の子らしくないのかなって。周りのみんなにも王子様みたいに扱われてきたし。だから、きっとわたしには初潮は来ないんだって思い込んでた。いや、なんか違うな。わたしが女の子らしくないのは、きっと生理が来ないせいだと思ってたんだ。」
吹雪は何も答えられない。吹雪にとって生理とはただ辛いだけのものだった。それが明日香には救いになるとは考えてもいなかったのだ。
「本当は少女漫画とか大好きなんだ。かわいい女の子がかっこいい男の子に恋をする物語とか。あとね、甘いものが好き。パンケーキとか、かわいいお菓子をね食べたいって思ってたんだ。」
「めっちゃ女の子!!」
「そう!わたしは女の子!女の子だよ。女の子で良いんだよ。あぁ、なんか胸のつっかえが取れた気分だよ。体調は良くないけど。」
明日香は無邪気にはしゃぐ。なんか良いな、と吹雪は思う。
「吹雪さんも学校と印象がだいぶ違うよね。呼びつけだし。」
「良いの。これがわたし。あぁ、わたしも正直になろ。本当はね、本なんかより走るのが好き。大好きなんだ。風になりたい。クラスのみんなも先生もこの退屈な日常も全部吹き飛ばす大嵐にわたしはなる!!」
吹雪はそう言って、明日香の背中をはたき走り去る。
「いったぁい。何すんの。てか、速!」
明日香は小さくなっていく吹雪を見つめて足に力を込める。
「バスケ部エース!山寺明日香を舐めんなよ!!」
「あははは!先で待ってるよ!」
吹雪は笑いながら街を走り抜けた。
全力で走るのって、気持ちいい
開花 あきかん @Gomibako
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