エピローグ
俺が魚怪だったショウタくんを殺した後,すぐに近づいてくる数人の足音が聞こえた。俺は咄嗟に小学校の校門の影へと隠れてしまった。怖かったのだ。この状況はどう見ても殺人現場だ。警察がくれば間違いなく捕まると思った。しかし,現れたのは警察ではなかった。
現れたのは怪しげなローブの5人組だった。
「なんということだ!我々の希望が失われてしまった!」
「生きたままでいなければ意味がない!元の姿に戻ってしまっては意味がない!」
「もう同じ薬は1つもない!作れる者ももういない!」
「かすかな希望に賭けてみよう!この死体を調べてみよう!」
「それがいい!それがいい!」
そんなことを言って,そのローブの5人組は,ショウタくんの死体を持って行ったのだった。
俺はローブの5人組が遠く去っていくのを見届けた後,エリと魚怪に狙われていた子供と合流した。俺は2人に魚怪を殺すことに成功したこととローブの5人組がその死体を持ち去ったことだけを伝え,ショウタくんのことは言わなかった。
それからというもの,俺は倒れたショウタくんのあの姿を忘れる日はなかった。なにをしていてもあの姿が頭によぎる。そんな状態で気が晴れることもなく,ふさぎ込む毎日をおくった。あの日以来エリとも探検にいくことはなくなり,心配そうに話しかけてくれるエリにも愛想笑いを返す日々だ。エリは俺のことを「魚怪を倒して町を救ったヒーローだ」と言ったが,そうは思えなかった。俺はショウタくんを殺してしまった殺人者だ。
あの日,廃教会で儀式の場に居合わせたことで全てが狂ってしまった。あの場にいなければ事件に巻き込まれることはなく,こんな想いもすることはなかったのだから。俺の行動は間違いなく1人の子供や,これから被害にあっていたかもしれない人たちを救ったと思う。それでも俺は後悔をしている。きっと一生後悔し続ける。
あの日、扉を開かなければよかったと......。
魚怪のリチュア~俺達と儀式と魚怪の行方~ 緑塩ラマ @green-salt-rama
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