第2話光明子高校
最近の冷凍食品はいい。そのおかげで大して料理がうまくない人も、レンジでチンするだけ、旨そうに見えるから本当にこれを考えた人は天才だと思う。
美亜は弁当を持つとさっさと出て行ってしまった。俺も母さんが作ってくれたエッグトーストを頬張る(ほおばる)。
母さんは食器を洗っている。俺は母さんに言う。
「テレビ消していい?」
テレビはニュースをやっていたが、ほとんどバラエティー番組と大差なかった。
母さんは頷く(うなずく)。
「いいわよ」
「サンキュ」
そして、俺はiPhoneを取り出し、bluetoothで繋いだヘッドホンでクラシックを聴き始めた。
「慶次」
その時、老いた細い木のような痩せた体型の中にも、しかし意志の強そうな目をしているお母さんが話しかけた。
「何?」
「ヘッドホンは程々にね。耳が悪くなるから」
「うん、ほどほどにしておく」
「そう、ならいいけど」
そう言って母さんは柔らかい笑みをした。
「私、もう行くから、あなたの分の洗い物はあなたがしてね」
「わかった。ご苦労様」
俺は自分の分の皿とコップを洗い、それを水切りの上に置いた。
チラ。
時刻を見る、7時だ。歯磨きをして出ていけば余裕で間に合うな。
歯磨きをした後、家(アパート)から出て鍵を閉めた後、学校に向かった。
俺の名は藤木慶次(ふじきけいじ)。2週間前に誕生日を迎えて17歳になったばかりの男子高校生だ。多くの日本人がそうであるように俺も東京に住んでいる。そして、先ほど出てきた妹の藤木美亜(みあ)は俺の一つ下の高校一年生に当たる。
そして、俺が通う公立の光明子高校。
そこは新しくできた高校でバイトができるから俺たちはその高校を選んだのだが、自由の気風の割にバイトもできるため、学生たちの間では人気の高校だ。
しかも、ここが重要なのだが、その高校は主に貧窮者(ひんきゅうしゃ)向けに作られた高校で、特待生があるが、主に生活が困っている貧窮者向けに率先して受け入れ、無利子、無担保のローンまで組めると言うかなり、俺らのような両親がフリーターの家庭だとありがたい高校なのだ。
ただ、やはり、バイトができる公立の高校ということもあって人気は高く。他に勉強をできる人を差し置いて、自分が受かったことにはちょっと罪悪感を覚える。
後、勉強の質が違う、というのは感じることがある。
この光明子高校は二つの学科に分かれる、就職学科と進学学科。それは普通だと思うが、特待生は普通就職学科を選ぶが、その授業が質が高い。
この高校が最後の勉強だということもあり、いわゆる熱血教師が多い。しかも、それを就職科に重点的に割り当ててあって、受ける方も真面目に勉強しないと!という気持ちにふるい立たされてしまう。
ちなみにお気づきの方もおられるかもしれないかもしれないが、この光明子高校の名前は、日本で公的な医療施設並びに貧者向けの施設を作った、藤原光明子、光明皇后にちなんでつけられた。
そんな高校だからやることも辛いけど、でもかなりやりがいを感じることも事実だ。
「しかし、暑いな」
もう9月なのに、秋の爽やかの空気とともに少し暑い早朝だった。
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