第20話妹と勉強
「ただいまー」
がらんとした我が家。食材を冷蔵庫に入れて手洗いして寝転ぶ。
まさか仁に妹がいたとは。しかも、あまり仲が良くないらしい。
俺は考えたが、うまく思考が噛み(かみ)合わなかった。
俺と美亜の仲が気に食わないということは、相当、妹とは仲が良くないということか?まあ、そうだよな。普通妹と仲が良い兄なんてそういないよな?
そう、グルグルと思考のループを続けているとバタバタとした音が聞こえた。
その音は真っ直ぐにこちらへやってきているようだった。
そして、バタンと扉が開く。
「お兄ちゃんいる!?」
美亜が大きな声を出してリビングに顔を出す。そして、俺の顔を見るとヘナヘナとその場から崩れ落ちた(くずれおちた)。
「どうした!?美亜!」
俺はすぐに美亜に近寄る。そうしたら美亜は俺の袖に縋り(すがり)付いた。
「助けて!お兄ちゃん!」
「つまり、石井先生に1週間後に出す小テストの4割の回答に成功しないと、宿題を追加すると。お前だけ」
それに美亜は大きく頷いた。
「そうよー。ひどいでしょ?まあ、私だけ対象ってことでもないんだけどさ。こないだの中間テスト、私は内容酷かったからさ、いきなり宿題を増やすって言い始めたのよね。ひどい話じゃない?」
「でも、別にどうってことはないだろ?どれだけ、テストの結果が悪くてもさ、就職課は卒業できるんだし、無視すればいいんじゃないかな?」
生徒の自主性を尊重するというのがうちの学校のモットーだ。裏を返せば、勉強したくない人はいくらでも勉強をしなくてもいいことだ。
「うう、でもー。そらも、もっちーもそのテスト受けることになっているんだけどさ。私だけ、そのテスト真面目に取り組んでいなかったら恥ずかしいじゃない!なんとかしてよ!」
「なるほど、二人とも友情で勉強はしないという誓いを立てたが本当は勉強する可能性はある、と」
「そうそう。あの先生、本当に陰湿〜。私たち、勉強ができないグループを当ててさ。本当に陰湿だよね〜」
多くの生徒には人気のある先生だが、勉強がする気はない生徒には大いに嫌われているのだ。あの先生は。
「まあ、あの人は真面目だから」
「何がまじめよ!どうせ学校の勉強だって実社会では何も役に立たないんだし、好きにさせてよ!」
ドン!
美亜がちゃぶ台を叩いて行った。
「で、出題の範囲はどこまでなんだ?」
「う!それが・・・・・・・・」
「まさか、それもわかっていないっていうんじゃないだろうな?」
「いや、わかっているんだけどさ。古代地中海世界と中世ヨーロッパなんだけど、そもそも古代地中海世界って何?」
はー。
俺は大きく嘆息(たんそく)して天を仰いだ。
「とりあえず、今から古代地中海世界についてノートにまとめるから、それを読んでくれ。お前は夕食を頼む」
美亜はしゅたっと敬礼した。
「了解であります」
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