遺言書

バブみ道日丿宮組

お題:清い祖父 制限時間:15分

遺言書

 うちの家計は祖父が管理してる。

 他の誰かが管理してもいいのだろうけど、家にある家具やらお金やらを祖父以上完全に理解してる人間はいない。そういうわけで祖父が管理してる。

 僕はおじいちゃん子だったので、いろいろ教えてもらってる。

 次の管理者は僕と祖父はみんなの前で言ったので、嫌な視線を浴びた。一族の財産をまだ中学生な子供に預けるなど正気の沙汰ではないとか、あの子供は不幸の子だからだめとか、聞こえる言葉で屋敷内に浸透させてた。

 僕は確かに両親を失ったのは不幸なのかもしれない。けれど、その分祖父が一緒に入れてくれたし、学校に行けば友達もいる。

 ただ……一族の子供は学校でも仲良くはならなかった。なにか話したそうにこちらに視線を寄せることはあっても、直接的にくるものはいなかった。

 そしてしばらくして祖父はなくなった。

 遺産管理を遺言書で仕分けた結果、僕に全ての遺産がきた。

 妬ましい視線をより一層屋敷内で感じるようになって家を出ることにした。

 お金はある。まず身の危険を回避するために、いろいろと対策をした。

 直筆の遺言書では、亡くなった場合孤児院に全てお金を寄付する。また企業を畳むとも書いたし、死に方の種類によって屋敷の人間に対処することも書いた。

 予防策として屋敷の人間にも遺言書は送っておいた。

 改ざんすることはおそらくできないだろう。あくまでも送りつけるのはコピーであって、本物は弁護士たちが握ってる。その弁護士は祖父が推薦する人たちなので大丈夫なはずだ。

 作業が終わった時点で僕は祖父の残してくれた仕事に携わることにした。学校が終わったら会社に向かうという日課を大学に通うまで行い、卒業後祖父と同じ代表取締役となった。

 この頃になると、一族の人間たちは僕に邪な視線を送ることをやめた。一人ひとり与えられた役目を行うようになった。

 とはいえ、あまり好かれてないことは変わらなかった。

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遺言書 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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