ションボリ人間

デートから一週間後の月曜日、怜は突如学校から姿を消した。

出席簿には欠が並んでいる。

私のもとに怜からの連絡はない。

持っている情報は他の人と何ら変わりがない。

分かっていることは体調不良で休んでいるということだけだった。


結局怜は一週間丸々休んだ。

一度たりとも学校に来ることなかった。

先生から入ってくる情報は体調不良の一点張りだった。

金曜日の夕方に怜から直々に情報提供があった。

“感染した”

その一言だけが怜からのメッセージだった。


その一言が私の心をむしばんだ。

私がデートに誘ったからだろうか。

気の緩みがあったからだろうか。

人混みに自ら足を踏み入れてしまったからだろうか。

二週間前の私を思い出すほどあれがいけなかった、これがいけなかったと考え出したらきりがないくらい今の状況を生み出してしまった可能性のある行動が思い浮かんだ。

デートに行ったからいけない、デートに行かなかったら大丈夫だった、とはっきりと言えることではない。


“体調は大丈夫なの?”

私が送ると“熱が出てるだけ”と数秒で返信が来た。

複雑な症状が出ているわけではなさそうだから少しだけ安心した。

“濃厚接触者になるかもしれない、ごめん”

気にしていないと言えば嘘になるが、濃厚接触者になることにそれほども抵抗を覚えていなかった。

ある意味では誰もが通る道であり、周りの人の感染と密接な関係があるので仕方ないというような思いがあったのだ。


幸い私は濃厚接触者に認定されることはなかった。

話によるとマスクをしていれば認定されないらしい。

濃厚接触者になることに抵抗はなかったが、検査自体には抵抗があったのでどちらかと言えばほっとした。


ただ、情報がどこから入ったのかは知らないが怜が感染したらしいということと私が検査対象に入っていないことを聞き付けたママによって強制的に検査を受けさせられることになった。

ここでの唯一の救いは私が受ける検査は私が嫌がっていた方の検査ではなく、数週間前までにも感染したかどうかがわかる方の検査を受けることとなった。


ママの手配は迅速だった。

情報が入った日の三日後には検査が行われた。

結果が出るまで二日くらいはかかるらしく、その期間は学校に行くことなく家でただ静かに過ごした。


女子高生の楽しい一日を二回も奪うなんてとんでもない。

ママにもパパにも抗議した。

私が出来る最大の抗議をした。

それでも残念なことに私は散った。


検査結果は今の時代に添っていた。

ネットでIDとパスワードを打てば結果が出るのだ。

検査から結果を見るまで家からママとパパが出してくれなかったことを除いて快適に過ごせた。

“濃厚接触者ではない”、この安心感が私に結果を見ることを緊張なく進めさせた。


結果を見た私は唖然とした、愕然とした。

私は暗い道に一匹で迷いこんだ生まれたての小鹿だった。

黒い影が見えてきた。

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行動の自由 from. キザなRye @yosukew1616

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