行動の自由 from.

キザなRye

キャピキャピJK

今の世の中は制限が多すぎだ。

国家権力によって我々国民の自由が奪われている気がする。

刑法や民法が嫌だとかは言わない。

法律に基づかない、“お願い”という形の行動の幅の縮小が問題なのだ。


ある日、目覚めると私の前に広がっていた世界は今まで見たことがない景色だった。

すべての人にとっての冬の時代の始まりだ。

一歩外に出てみると一面が銀世界になっている。

どこを見渡しても足の踏み場がないくらい真っ白だ。


どうしても遊びに行きたいな、デートに行きたいな。

そんな思いが沸々と沸き上がってくる。

せっかく彼氏ができたのだしちゃんとデートに行かせてほしい。

私一人くらい良いよね、むしろ周りだって皆高校生楽しんでいるし良いじゃないか。


私は心を決めて二人きりでのお出掛けの計画を立てた。

彼氏が出来たらしたいことリストみたいなものが私の頭の中だけだが形成されていた。

それを上手く組み合わせて計画として盛り込んでいく。

さとしには内緒にしてビックリさせたいな、というところも作っている。

喜んでくれたらそれだけで頑張ったかいがあると思える。


概要だけを摘まみ出して怜にデートに行こうよと誘った。

怜は私よりも外出することをいとわないのは知っていたので予定通り一つ返事で承諾してくれた。

むしろデートまで長かったなと言われても同然だった。

それだけ私とのデートを楽しみにしてくれていた。


“女の子は好きな人のためにならいくらでも可愛くなれる”


この言葉は本当だ。

現に私がデートの計画を練ってから当日まで怜のために可愛くなりたいと思って色々調べて実践した。

出来ることは片っ端からやった。

端から見たらお世辞でも可愛いと言えないかもしれないが、自分の自信をつけるという点で考えれば価値ある行動だった。


そして初デート当日、夜はほぼ一睡も出来なかった。

計画の最終確認と初デートという緊張の二つが複雑に絡まり合って私を寝させてくれなかったのだ。

ある意味ではここからデートは始まっていた。

どんな服で行くかは前々から決めていて新調してた。

彼氏の好みがどうのこうのとか考えるべきところではあるが、学校でしかも制服でしか怜とは顔を会わせていなかったので好みの情報なんて手元にあるはずもなかった。

そこで私の好きなコーデにしたのだ。

待ち合わせして第一声で“可愛い”とか言ってくれたら申し分ないな、と思いながら怜のいる待ち合わせ場所に二分少々の遅刻で行った。

「ごめん、ちょっと遅れちゃった。」

これが私の第一声である。

「大丈夫、そんなに待ってないし。」

ああ、なんと紳士的な振る舞いをしてくれるのだろうか。

服装もやけに大人っぽい。

自分と同い年だなんて信じられない。

過去の私がよくこんな人を彼氏に出来たなとつい褒め称えてしまった。

「それより私服可愛すぎない?秘めてた何かが解き放たれた感じ。」

来た。

第一声、可愛い。

口下手なりに絶賛しているのは伝わってくる。

ちょっぴり口下手なのが怜の可愛いポイントの一つ。

そこに言いくるめられた私がどこかにいるのも事実。


デートは私の思い描いていた計画というレールの上を徐行運転していた。

遊園地に行って二人きりの観覧車に乗ることやジェットコースターでキャーキャー叫んで隣の怜に手を握ってもらうことなど自分の意思だけでどうにかなるものも怜の行動に依存しているものも含めてこれ以上にないくらい真っ直ぐな一本道を進んでいた。


計画は滞りなく遂行され、サプライズで怜を連れてきた高級レストランまで辿り着いた。

夜まで一緒とは言ってあったが、貴家にここまで奮発したことが分かるようなところに来るとは誰が思っただろうか。

十回の人生で一回気付けたら十分だと思う。


レストランの手前で私は少し咳き込んだ。

何かの病気とかそういうことは一切なく、少し噎≪む≫せただけだ。


怜はコース料理が初めてだったようで次々と運ばれてくる料理一つ一つに感動しながら美味しい、美味しい、と噛み締めるように食べていた。

そんな幸せそうな怜を見ている私は幸せだった。

幸せそうに食事をしているのを見ると女性は母性本能がはたらいてしまう。

なので好きな人が自分が作ってなくても美味しそうに食べていると幸せに感じるのだ。


私と怜は色々なことを語り合った。

一方的にどちらかが話しているという方が多かったが、怜は私が話すとちゃんと頷いて聞いてくれるし、口を開くと私の知らない新たな世界へと連れていってくれるのでだれかと話していてこれほど過ごしやすかったことはない。


怜の幸せそうに食べる姿と他愛もないことを話していたのとで奮発してまでここに来た意味があった。

恋人のためにお金を使えるって幸せだ。


駅での別れ際、離れるのが名残惜しくてしかたなかったが、明日学校があるので寝て登校すればまた会えるのだと言い聞かせてすんなりと別れた。

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