基本的なあらすじはキャプションに書いてあるとおりですが、星新一のような「あり得る少し先のSF」である一方、地球滅亡しがちな氏に比べ、ビターマイルドな希望を残して本作は締めくくられます。
音楽に対する着眼点の鋭さは言わずもがなですが、音楽がバズることなど珍しくなくなった現代にこそ、よく響くSFだと思います。
蛇足ですが、人間の進化に多大な影響を与えたと言われると、感覚の8割を占める目や、二足歩行になったことで自由に使えるようになった手がまず挙がるでしょう。それが間違いだとは思いません。
しかし言葉という「音声」もまた、人間を語るうえで欠かすことのできない要素です。子細な発語が可能なように、窒息のリスクを顧みず気管と食道を繋げた進化は、二足歩行に並ぶ革命と呼んでも過言ではないでしょう。
音楽というと娯楽の一種と捉えられることが多いですが、もしかするとそれに留まらないかもしれない……そんなふうに見識を変えてしまう良き作品でした。