エピローグ
俺は買ってきた物をユッコに渡す。
「ガソリンを買えなくて車ごと買ってきたのね。タナピーにしてはやるじゃん!」
自動車に乗るのが夢だったらしいユッコは、早速無免許でケラケラ笑いながら車を運転しだすが……。
いきなり木にぶつかって軽自動車をいきなり廃車にしやがった。
いくら免許のない異世界と言えど、自動車の運転は教習所に行ってからにしようぜ。
俺は書店で印刷してもらったメモを渡しナデシコに謝る。
「頼まれてた本なんだけど、発売延期になってたみたいで買えなかったんだ。ごめんな」
「いえ。それなら仕方ないです。でもブルークレリックの続きが見たかったのですごく残念です」
ナデシコが落ち込んでいるとエアバッグで鼻血ブーになったユッコがメモを取り上げた。
「ブルークレリックねー。これは売ってないわね」
「知ってるのか?」
ユッコが頭をポリポリ掻いた。
「だって、これ私が商業で描いてるやつだし」
「ええ~!」
「私がこっちの世界に来て原稿を渡せなかったから延期になっちゃったみたいね」
ナデシコがあごが外れそうなぐらい驚いてる。
「ユッコさんて、おたゆう先生だったんですか?」
「そうとも言われてるわね」
「さ、サイン下さい!」
結局俺が買ってきたPCで新刊のセルフ同人誌を描きサインして渡すことになったので一件落着だ。
高校のクラスの存在がまるまるなくなってたことも話しておいたが、ナデシコは「今までそんな事はありませんでしたよ」と断言するし、ユッコは少し考え込んだあと「それを知ったらみんな混乱するだろうから、今はその事は誰にも口外しないで」と固く口を止められた。
*
ユッコが上手い事動いてくれたおかげでもう二人の身の危険を心配することは無い。
俺が屋敷に戻るとニケさんとアイラちゃんが出迎えてくれた。
「お兄ちゃんお帰り」
「タナオカさんお帰り」
「ただいま、アイラちゃん、ニケさん」
二人は俺に駆け寄って抱き着いてくる。
しかも涙ぐんでいた。
「どうしたんだよ、二人とも?」
「故郷に帰ったタナオカさんはもう二度と帰ってこないと思ったから」
「召喚勇者が元の世界に戻ってこっちの世界に帰って来たなんて話を聞いたことが無いから、もう二度とお兄ちゃんと会えないと思ってたんだ」
「帰るにしてもお前たちを置き去りにするわけがないだろ」
少なくとも一人は日本からこの世界に戻って来た奴を知っている。
ナデシコなんだけどな。
「俺はこのエストの街が故郷だし、このエストの領主邸が実家だ。そしてアイラちゃんとニケさんは俺の大切なお嫁さんで、そして家族なんだから」
それを聞いて表情を明るくする二人。
「お兄ちゃん!」
「タナオカさん!」
そういえばユッコからお土産を貰ったんだったな。
「ほら、二人にお土産だ」
「お兄ちゃん、これはなに?」
「これは異世界のお菓子でケーキと言って、お祝い事が有った時に食べるものなんだ」
買い出しを頑張ったのでご褒美としてユッコがくれたショートケーキのホールだ。
「じゃあ、タナオカさんが実家に帰って来た記念だね」
そうして笑顔を見せるニケさん、マジ可愛い。
すると、柱の陰から興味津々そうにじっとこちらを見つめているメイドがいた。
マリエッタさんだった。
俺はマリエッタさんを呼びつける。
「マリエッタさん!」
「は、はい、タナオカ様」
まるで飛び上がるんじゃないかって勢いで驚いてこちらに慌ててやってきた。
「マリエッタさんも一緒に食おう」
「いいのですか?」
「お祝いは人数が多ければ多いほど楽しいしな。それにいつもアイラちゃんと一緒のお前がこの時だけ遠慮するのはおかしい」
「ありがとうございます」
最近マリエッタさんとの関係もだいぶ良くなってきた気がする。
*
こうして始まった俺の異世界生活は多くの仲間に恵まれ、お嫁さんが二人も出来て順調だ。
しかも二人とも可愛すぎる。
いいだろ?
俺も日本にいる時はこんな可愛い子と一緒になれるとは思いもしなかった。
もしキミの足元に魔法陣が現れて異世界に飛ばされたなら必死で頑張ってみてくれ。
俺が出来たんだからキミたちにも出来るはずだ。
これは異世界からやって来た陰キャが最弱の商人に就き勇者パーティーを追い出されてから成り上がるまでの日記、そして最強の冒険者になるまでの冒険譚。
最後に一言言って〆たいと思う。
異世界って最高だぜ!
アイテムボックスの正しい使い方 ― クラスごと集団転移しましたが、クラス一番の雑魚の俺は勇者パーティを追放されたけどアイテムボックスの使い方を工夫したら最強でクラスメイトが雑魚に見える件。 かわち乃梵天丸 @apopyon
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