最終話 おっぱい皇子、救世主となる

 「皇帝陛下の思いえがいた絵図とは大分違いますが…まあ良いでしょう」


 ツェーザルは自らの姿をみるみると変えていった。


 貧相なねずみ男の体系がみるみると巨大化し、旗艦ドナートをめきめきと押しつぶしていく。


 そしてー、




 「密偵としての役割はもう終わり…あなた方には、死んでもらいます!!!」


 バリバリバリバリッ!


 轟音を上げて木造船は粉砕され、巨大な猿が姿を現す。


 目がぎらぎら光っていて気色の悪い猿だ。


 これが密偵ツェーザルの正体らしい。


 動物だけでは飽き足らず人間も改造することを厭わないようだ。


 「…お前がエルデネト帝国の密偵だったか。やけに出世スピードが早いと思ってたんだ。どこから紛れ込んだ?」


 「おーほっほっほっほっ!簡単なことです!田舎でくすぶっていた目立たない貴族になり替わればいいだけのこと!」


 「本物は殺したというわけか。まったく、エルデネト帝国らしいな」


 「ずいぶん余裕のようですが、すでにこの島とザールラントの破滅は決まっています!」


 ツェーザルは島の西方を指さした。


 エルデネト帝国が我が領地としている大陸の方向だ。


 「【リューゲン漁場】の先遣隊はすでに航路を調べ終えました!すでに大艦隊がリューゲン島に向かっています!ここさえ占拠すればトリーアの港町も干上がり、ザールラント全体を抑えるのも時間の問題でしょう!」


 こちらに近づいている集団がいるのは【風震】ですでに探知していた。

 

 船は急造だし操船にも苦労しているようだが、ザールラント王国が仲間割れを起こしている今がチャンスだと思ったのだろう。


 ここにたどり着くまで、約1日といったところか。


 数時間もすれば、艦隊の先遣が島からでも見えてくるはず。


 「今のうちに降伏しなさい!さすれば命までは取りません!慈悲深き皇帝は奴隷としてあなた方を生かしてくれるでしょう…あははははははは!」


 ツェーザルは自信満々といったところだ。


 数年間築き上げていた謀略が成功すると信じて疑っていない。


 「オレからの返事を聞かせてやろうか?」


 「…何?」


 「答えは簡単だ」




 島でもっとも標高の高い【トモ―ロス山】からの閃光。


 山頂に待機していたアメリーの【神弓】。


 一つだけでない。


 一つ、また一つ。


 まさに矢継ぎ早に放たれた矢が、リューゲン島西方の海域へと向かっていく。


 「侵略者は…おとといきやがれってんだ!」




 ドォォォォォォン…


 はるか遠くで轟音が響いた。


 船を完全に破壊する必要はない。


 船底に穴をあければ、船はぞくぞくと沈んでいくだろう。


 「お、おのれ~~~~!やはり私自らが鉄槌をー」


 「その前に一つ聞かせろ」


 こいつは生かしておけない。


 だが、1つ確かめるべき事柄がある。


 「親父を殺したのは…お前か?」


 「くふふふふふふふ!そうですとも!」


 ツェーザルはあっさりと吐いた。


 「さしものアダルブレヒトも、あなたに化けた時は一瞬のスキを見せました!そこを毒矢で一撃…」


 「分かった、もういい」


 …ったく。


 エロ親父の癖に、妾腹の息子目の前にして油断しやがって。


 困ったやつだ。


 「手短にあの世に送るが、文句は言うなよ」


 拳に渾身の力を籠める。


 「ひーひっひっひっひ!情報では多少やるようだが、【凶化】で肉体を極限まで強化した私に勝てるものか!葬って手柄としてくれる~~~!」


 そしてー、




 「ーーーー【風穴】!!!」


 ツェーザルの鋼のような肉体を一瞬で破壊した。


 

 ****



 「ぐえええええええっ!ぐ・・・このチェ―ザルがただで死ぬと思うなよぉ!」


 肉体に疲労感。


 良く見ると、右腕にサソリのような虫が貼りついている。


 怒りで一瞬【風壁】が全身から消えていたようだ。


 「ひひひひ…人間のスキルの源を吸い取る【ベニサソリ】は…効くだろう。ぐぇ…」


 頭だけのツェーザルを吹き飛ばしてとどめを刺したが、仇を討てた喜びにひたる暇もない。


 夜ハッスルしたときのようなだるさが体全体を包み込み、意識が徐々に遠のいていく。


 まずい。




 「…ちっ。何かがリューゲン島にやってきやがる」


 まずいことは続くものだ。


 アメリーの【神弓】で大損害を被ったエルデネト帝国艦隊が引いていくようだが、何か置き土産を召喚したらしい。


 それは、巨大な隕石。


 すでにリューゲン島から見える位置まで迫ってきている。


 密かに手に入れたエルデネト帝国の歴史書で読んだことがあった。






 帝国の皇帝は、自らに逆らうものを罰するにあたり、巨大な岩を敵対者の頭上に落とすと。



 ****



 「…くそったれが」


 オレはなんとか右手を掲げ、迎撃の準備をする。


 いきなり皇帝が粛清に来るのは予想外だった。


 スキルも全力を出せるかわからない。


 でも、やるしかない。


 この島のおっぱい、雄っぱい、ザールラントのみんなを守る。




 ー小僧、おっぱいは好きか?


 それが、親父との約束だから。




 「ユルゲン、あなたは一人ではありません」


 むにゅん…


 その時、誰かがオレの右腕におっぱいの感触を伝えた。


 【母なる乳】を持つ乳母、エミーリアである。


 「ユルゲンならきっとできるよ!だって、ユルゲンはいつだってあたしのヒーローなんだから」


 もにゅん…


 オレの幼馴染、クラーラは【若乳】で左腕を暖めてくれる。


 「こんなところで負けるあなたではありません♡」


 つるん…


 背中からは【潜乳工作員】のアメリーがー、


 「弟君、頑張って!」


 どしーん!


 正面からは【進撃のおっぱい】のリンダがー、




 オレにおっぱい力を補給してくれた。


 体にみるみる力が湧いてくる。


 「みんなありがとう!少し離れていてくれ」


 再び右手をかざし、オレは風のオーラを集めていく。




 今なら、打てる気がした。






 「ーーーー【神風】!!!」


 初めは一筋の風。


 リューゲン島を離れるたびに大きくなり、加速度を増して、邪悪な隕石と等しい大きさとなる。


 そしてー激突!



 

 「うおおおおおおおおおおおおっ!」


 「みなさん!ユルゲンにもう一度おっぱい力を!!!」


 「「「はい!!!」」」


 再び多種多様なおっぱいに揉まれるオレ!


 拮抗すると隕石と風!


 だが、少しずつ風が隕石を包み込み、ゆっくり、しかし確実に押し返していく!


 あと少しだ!


 「おっぱいの力は…偉大だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」


 最後の力を振り絞り、隕石を海の彼方まで追い返す!


 


 

 やがて隕石は完全に力を失い、大陸の奥深くまで消えていく。


 こうして、エルデネト帝国とザールラント王国が初めて公式に刃を交えた戦いは、幕を閉じるのであった。


 




 オレのおっぱい天国にも、ひとまずの平穏がもたらされたのである。


 

 ****



 「やれやれ。またこんなに来やがったのか。すぐ木屑になる運命ってのによぉ」


 数年後。


 再びリューゲン島に押し寄せてきたエルデネト帝国の大艦隊を前に、オレは興奮を隠せないでいた。


 あらゆる船をかき集めた大艦隊だが、こちらも準備は万端。


 今回こそ皇帝の暗殺を成し遂げ、ザールラントに平穏を取り戻して見せる。


 「みんな!準備はいいな!」


 「はい!行きましょうユルゲン!」


 「あたしも、戦いで役に立つところを見せてやるんだから!」


 「皇帝を弓で射ってもいいんですよね♡」


 「弟くんのためならえんやこら!」

 

 4人のおっぱい美女がいれば、必ず成し遂げられるはずだ。


 「エルデネト帝国の雑魚ども!オレの名を死ぬまでの間に覚えておけ!」


 風のオーラを右腕に蓄え、堂々と名乗りをあげる。






 「リューゲンをこよなく愛するおっぱいの守り手にしてザールラントの王位を継ぐ者、ユルゲン・ドナート様だ!」


 オレたちの戦いは、これからだ!








 ****


 

 2つの戦役の後、エルデネト帝国は崩壊し、ザールラントはその後300年栄えることになる。


 英雄たるユルゲン・ドナートは国民の圧倒的な支持を得て国王に就任し、王国の最盛期を築き上げるのであった。

 

 

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兄に「お前の故郷は我が国固有の領土ではないので侵略者に明け渡す」と言われたので追放されることにしたおっぱい王子、故郷に戻りて【神風】を起こす~南国美女のおっぱいを楽しみながら侵略者を2度ざまぁします 2023年中に小説家となるスンダヴ @sundav0210

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