異種族

バブみ道日丿宮組

お題:おいでよ何か 制限時間:15分

異種族

 教室に入ると、おはよーと当然のように皆が声をかけてきた。

 挨拶週間ということもあり、

「おは」

 と自分も短く答えた。

 窓側の席の一番うしろの席に腰掛ける。そこが自分の席だ。

 カバンの荷物を机に入れ、カバンを机の横にかける。

 そこでようやく教室にいた誰もかが、こちらを見てることに気がつく。

「なにか?」

『なんでもないよ』、『いいんじゃない』、『ついにリア充か』。

 たくさんの声が生まれた。

 どういうこと?

 説明してほしいと思い、息を吸った途端、

「君あまり気が付かないんだね」

 耳元で可憐な声が聞こえてきた。

「は?」

 声に振り返ると、女の子がいた。いたというか浮いてた。角が2つあるし、衣装はバニーガールのコスプレみたいなもので見たことがない子だった。

「えっ、えええ? 誰?」

「最近ここらへんに積みついた妖怪だよん。そして君に取り付くことを決めました」

 ぱんぱかぱーんとなんかベルがなった。

「異種族間交流って知ってるよね?」

 最近はじまったものだ。

 この世界にいる全てのものと意識疎通させて、新たな人間社会を作り上げる。いわゆる住み込みでホームステイするそんな話。

 クラスメイトの何名かはすでに受け入れて、楽しくやってるとかの話も聞いた。

「それでなんで鬼……の君が俺に取り付くことになったわけ」

「おもしろそうだから」

「おもしろい……ことはないだろう」

 自分の学力は平均。スポーツもそつなくこなす程。それでも人並みのコミュニティーは作ってて、一人孤立してるということはない。

 つまり、そこらへんにいる学生Aという扱いになる。

「匂いが他とは違ったんだ。美味しそうってことはないんだけど、特別な念が込められて異種族に半分近いんだ」

 匂い……? 嗅いでみても汗臭いものしかわからない。

「過去にたぶん混じっちゃったじゃないかなぁ。事故とかなかった?」

「そういえば、確か……、子供の頃怪我して救急車に運ばれた記憶があるかな」

 それがどうしたんだ。なにか関係があるの?

「ふーん。なるほどね。その事故は意図的だったかもしれない」

「はい? そんなわけないでしょ」

 意図的な事故は事件と変わらない。犯罪だ。

「おそらく町の方針かなんかだったんだろうね。神を降臨させるとかなんとかで、一部を食べさせて大量の血を流させ、人間でない血を入れる」

 頭痛がした。

 ただの妄想ごとだと反論したかった。

「ふーん、認めるんだ」

「わからない。わからないけど、否定という感情がわいてこない。むしろ血がざわめ付く感じがする」

「ふふ。じゃぁ大丈夫そうだね。授業終わるまでは君の中で眠らせてもらうから」

 そういって女の子は抱きしめるように俺を掴むと、そのまま消え去った。

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異種族 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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