フェミニア王国に帰ってきました
転移魔法を使い、一発で帰ってきた私とアイラン様を見つけたアイラン様専属執事が、こちらに走って来た。
「おかえりなさいませ!さあ、お荷物は私目がお持ちいたします。皆様お待ちですよ」
皆様?アイラン様と顔を見合わせつつ、荷物を持ち歩き出した執事の後ろを付いて行く。
王宮に入ると、なぜか応接室に通される私とアイラン様。
アイラン様と首を傾げつつ、応接室に入ると
「シャーロット、お兄様、お帰りなさい」
そう言って、オルビア様が飛びついて来た。周りを見ると、アルテミル様・ファビオ様・フェアラ様も待っていた。
「お前たち、土産目的にこんなところで待っていたのか。ちょっと図々しいぞ!」
ジト目で睨むアイラン様に対し
「失礼ね。お兄様たちを心配して待っていてあげたのに!」
プリプリ怒るオルビア様。
「オルビア様の言う通りですよ。あまり失礼な事は言わないで下さい、アイラン様。皆様お待たせしてごめんなさい!お土産をたくさん買って来ましたので、今から渡しますね」
お土産と聞いて喜ぶオルビア様達。
「ほら見ろ、こいつらは俺たちではなく、土産を待っていたんじゃないか…」
小声で不満を漏らすアイラン様を無視し、皆にお土産を配り始めた。
「これがオルビア様、こっちがフェアラ様、そしてアルテミル様とファビオ様の分ですわ」
予め分けておいたので、スムーズに渡せた。
「こんなに沢山もらっていいの?それになにこれ!めちゃくちゃ奇麗なんだけれど!」
宝石鉱山で取れた宝石を手に取り、目を輝かせるオルビア様。
「それはゾマー帝国の特産品の宝石ですわ、オルビア様の物はエメラルドです。それぞれ皆様の瞳の色の宝石を使っておりますの」
「まあ、なんて素敵なの!こんな奇麗な宝石、見たことが無いわ!」
「本当に奇麗ね。シャーロット様、私の物は何という宝石ですの?」
「フェアラ様とファビオ様の物はアクアマリンですわ。ちなみにアルテミル様の物はアメジストです」
みんなの宝石を一通り説明した。オルビア様とフェアラ様が、うっとりと眺めている。
「そうそう、アルテミル、ファビオ。実はこの宝石を今後ゾマー帝国から輸入しようと思っているんだ。逆に家からは海の物を輸出する予定だ。向こうの国王とは既に話が付いている」
「なるほど、この宝石ならきっとフェミニア王国だけでなく、隣国の国々も欲しがるだろう。いい物を見つけて来たな、アイラン」
宝石をまじまじと見つめ、呟くアルテミル様。
「それで、家からは具体的に何を輸出するつもりだい?」
「そうだな、今考えているのが真珠や珊瑚。他には魚類などの食べ物も考えている。ただ、転移魔法が使えるとはいえ、荷物が多くなればその分運ぶのに時間が掛かるから、生ものはきついだろう。だから干物にして輸出しようと考えている。既にゾマー帝国の国王と、シャーロットの父君には真珠と珊瑚、干物を置いて来た」
「さすがだな。それじゃあ、早速話をまとめて、ゾマー帝国側と話を詰めないとな」
アルテミル様が嬉しそうに話している。
「ねえ、ゾマー帝国と貿易をするという事は、近いうちにまたゾマー帝国に行くのよね。今度は私も行きたいわ!」
オルビア様が目を輝かせている。
「ダメだ、仕事で行くのだから、お前は連れて行けない。そもそも、こっちはシャーロットしか転移魔法が使えないんだぞ!関係のない人間まで連れて行けるか!」
あっさりアイラン様に却下されたオルビア様。
「なんでよ!お兄様のケチ!」
「オルビア様、行って帰って来るだけなら、1日あれば大丈夫ですので、またオルビア様の都合の良い時に一緒に行きましょう」
怒り狂うオルビア様をなだめようと、私が提案をした。
「本当!シャーロット、約束よ。絶対近いうちに連れて行ってね」
嬉しそうに笑うオルビア様。その時はもちろんフェアラ様も連れて行こう。
「とりあえず、今日は長旅で疲れているんだ。そろそろ帰ってくれるかい?」
「何が疲れているよ。一瞬で帰ってきたのでしょう?シャーロットが疲れたと言うなら分かるけれど、どうしてお兄様が疲れたなんて言うのよ!」
すかさず反論するオルビア様。この兄妹の口喧嘩、なんだか懐かしいわ。
「相変わらずお前はうるさいな!土産も渡したんだからもういいだろう。とにかくもう帰れ!」
「はいはい、帰りますよ。それじゃあ、アイラン。ゾマー帝国の件、明日他の貴族も呼んで、詳しく話し合おう。それじゃあな」
そう言うと、アルテミル様はオルビア様を連れて帰って行った。
「それじゃあ、俺たちも帰るわ。また明日」
「シャーロット様、お土産ありがとうございます。私もゾマー帝国に連れて行ってくださいね」
そう言い残し、ファビオ様とフェアラ様も帰って行った。
「シャーロット、やっとうるさいのが帰ったね。疲れただろう?今日はゆっくり休もう。そうだ、食事も部屋に運ばせるからね」
にっこり笑ったアイラン様に抱きかかえられて、夫婦の寝室へと向かった。
「アイラン様、自分で歩けますわ」
使用人や護衛騎士たちが生温かい目で見守っている事に気づき、慌てて降りようとしたが、もちろん降ろしてもらえるはずもない。
そしてその日の夜は、アイラン様が言った通り、寝室に食事を運ばせて2人で食べた。
「やっぱりフェミニア王国のお料理が一番美味しいですわ。このお料理を食べると、ここに帰って来たって感じがします」
「そうだね、ゾマー帝国の料理もおいしかったが、やっぱりフェミニア王国の食事を食べると落ち着くね。さあシャーロット、今日は疲れているだろうから、早めに寝よう」
その後湯あみを済ませ、2人でベッドに入った。いつもなら真っ先に私に手を出してくるアイラン様が、なぜか手を出してこない。
こんな事もあるのね。そう思いながら、眠りに付いたのであった。
翌日
「シャーロット、おはよう。気分はどうだい?」
「ええ、昨日はゆっくり休みましたので、体調は万全ですわ」
「それじゃあ、魔力もマックスだよね?」
えっ?魔力?
「もちろん、そうですが…」
私の言葉を聞き、嬉しそうにリングを手渡して来たアイラン様。このリング、見覚えがあるわ。これってもしかして…
「さあ、シャーロット。このリングに思いっきり魔力を込めてくれ!」
「えっ、でも…」
「さあ!早く!」
アイラン様の勢いに押され、言われるがまま魔力を込めた。次の瞬間、虹色に光るリング。これってやっぱり、あれよね…
リングを私から取り上げたアイラン様は、嬉しそうに私の腕にリングを付けた。
「アイラン様、これって魔力無力化リングですよね」
恐る恐る訊ねた。
「そうだよ、実は王宮魔術師に、シャーロットの魔力を使えないようにするリングについて詳しく聞いていたんだ。そしたら、シャーロットに魔力を込めさせればいいって教えてもらってね。これでシャーロットは俺の許可なく魔力が使えなくなったね」
嬉しそうに笑うアイラン様。そうか、それで昨日の夜は早く寝かせてくれたのね。魔力をマックスにする為に。
「大丈夫だよ、魔力無力化リングの使い方や注意点は、ここに書いてあるから。これでシャーロットはどうあがいても、俺から逃げられないね」
嬉しそうに私を抱きしめるアイラン様。
私は元々逃げるつもりはないのだけれど…
まあ、このリングでアイラン様が安心してくれるのなら、良しとしよう。
「アイラン様、オルビア様やフェアラ様と一緒にゾマー帝国に行く時は、このリングを外してくださいね」
ふと気になったことを伝えておいた。
「その件だが、女性3人では行かせないよ。俺たちも一緒に行くから。とりあえず、貿易の話が落ち着いたらね」
やっぱり付いて来るのか、何となくそんな気はしていたが…
でも、そんな先は嫌だってオルビア様、怒らないかしら?
そんなシャーロットの心配は、数日後発覚するオルビアの妊娠によって解消される事を、まだ誰も知らないのであった。
無実の罪で処刑されかけた元公爵令嬢は、絶体絶命の国王を守る為戦う事を決めました~私の魔力で命の恩人を絶対守ってみせます~ @karamimi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。