ゾマー帝国と貿易を行うようです
ゾマー帝国に来て5日が過ぎた。宝石鉱山に行った後は、王都の街をアイラン様とゆっくり観光をしたり、公爵家の庭でお茶を飲んだりしながら過ごした。
魔力の世界にも随分慣れたアイラン様は、もう誰がどんな魔法を使ってもびっくりしなくなった。
そうそう、アイラン様と言えば、宝石鉱山を観光した翌日から、なぜかお父様と一緒に王宮に行っている。大体昼頃には帰ってくるが、一体何をしているのだろう?
私も一緒に行くと言うと
「リアム殿下に遭遇するかもしれないから、シャーロットはここに居なさい」
と言われてしまい、おいて行かれるのだ。
もう明日にはフェミニア王国に帰る事になっているのに、なぜか今日も王宮に行っている。
ちなみに、本当なら帰りも1日別の国に泊って、ゆっくり観光をして帰る予定だったが、アイラン様が
「シャーロットの転移魔法を使えばどんな国にも行けるんだから、今回はどこにも寄らずに帰ろう」
と言い出したのだ。
確かに転移魔法を使えばどこにでも行けるのだが、せっかくアイラン様と2人きりの旅行なのだ。どうせなら他の国も観光したかったな。
そう思いながら、中庭で1人ティータイムを楽しむ。せっかくアイラン様と一緒に居られる時間なのに。フェミニア王国に帰ったら、きっと仕事が山積みでほとんど構ってもらえないはずだ。
だから、私は今という時間を大切にしたいのに…
一体アイラン様は何をしているのかしら?
その時、メイドが声を掛けて来た。
「お嬢様、宝石鉱山の人が宝石を持っていらっしゃいましたよ。今客間でお待ちです」
「そう、ありがとう。早速行くわ」
制作に1週間くらいかかると言っていたので、間に合うか心配していたが、何とか間に合った様だ。急いで客間に向かう。
客間に入ると、ヴォルトさんが待っていた。
「お待たせしてごめんなさい!宝石が出来たと聞きましたが」
「はい、完成したのでお持ちしましたよ。こちらです」
早速ヴォルトさんが宝石を見せてくれた。
「まあ、どれも素敵に仕上がっているわ。ヴォルトさん、本当にありがとうございます」
ヴォルトさんに深々と頭を下げた。
「お礼を言うのは私の方です。シャーロット王妃。こんなに沢山買っていただき、ありがとうございました」
しばらく雑談をしていると、王宮から戻ってきたアイラン様も客間に入ってきた。
「ヴォルト殿、宝石を持ってきてくれたと聞いたのだが」
「アイラン国王。先日はありがとうございました。はい、こちらにございます」
私の横に座ったアイラン様が、宝石を手に取る。
「本当に見事ですね。思った以上の出来栄えだ」
「お褒め頂き光栄でございます」
宝石を見ながら顎に手を当て考え込むアイラン様。一体何を考えているのかしら。
「ヴォルト殿、この宝石は本当に素晴らしい。我がフェミニア王国でもきっと人気が出るでしょう。そこで相談なのですが、フェミニア王国と取引をお考えいただけないでしょうか」
アイラン様の急な提案に、目を丸くするヴォルト様。
「ありがたいお話ですが、私の一存では決められません。国と国との貿易は、国王同士の契約書が必要になるはずです。ですので、陛下に一度ご相談して頂けますと助かります」
確かにヴォルトさんの言う通りだ。ただの宝石鉱山の責任者と、他国が契約を結ぶのは不可能。下手をすると、罪に問われることもある。
「その点は問題ありませんよ。既にゾマー帝国の国王とは話が済んでいますので。我が国は海がある為、海の物が豊富でしてね。お互い無いものを補おうと言う事で、話が進んでいますから」
アイラン様、いつの間にそんな話をしていたのかしら。そうか、ここ数日毎日王宮に行っていたのは、この事を相談する為だったのね。さすがアイラン様だわ。ただ観光をするだけではなく、国の為にしっかり貿易相手国として交渉するなんて。
尊敬の眼差しでアイラン様を見ていたのがバレたのか
「惚れ直したかい?」
と、耳元で囁かれてしまった。
すかさず私もアイラン様の耳元で
「はい、惚れ直しました」
と、素直に答える。
一瞬大きく目を見開いたアイラン様に、ギューッと抱きしめられた。もう、ヴォルトさんもいるのに、恥ずかしいわ!
顔を真っ赤にして俯く私をよそに、アイラン様とヴォルトさんはその後も、取引に関する話をしていた。
とにかく一度フェミニア王国に帰り、話をまとめた上でまた交渉に来る事になった。一応今後は陛下やお父様立ち合いのもと、話は進むようだが。
嬉しそうに帰って行くヴォルトさんを見送る。外を見ると、既に太陽が沈みかかっていた。どうやら、随分長い時間話をしていたみたいね。
その日の夜は、最後の晩餐という事で、ゾマー帝国で最高級のお肉が振舞われた。
アイラン様の話では、この牛肉も貿易対象になっているらしい。それにしてもお父様やお兄様、アイラン様は貿易についての話ばかりしていて、全く話に入れない。
今日は最後の晩餐だっていうのに…
でもアイラン様って本当に国の事を考えているのね。私はそっちの方は全くと言っていいほど疎いので、本当に尊敬するわ。
結局最後まで話に入れないまま食事を済ませ、寝室へと戻った。
「それにしてもアイラン様、今日はびっくりしましたわ。まさか、貿易の事を考えていたなんて」
「宝石鉱山を見た後、思ったんだ。こんなに素敵な宝石があるなら、フェミニア王国にも広めたいってね。それに、我がフェミニア王国にも魅力的な物が沢山あるからね。お互いにとって、貿易を行う事はメリットも大きいと思ったんだよ」
にっこり笑うアイラン様に、ギューッと抱き着いた。
「アイラン様は、本当に賢くて尊敬しますわ。こんなに素敵な旦那様をもてて、とても幸せです」
つい本音をポロリと呟いてしまった。
「それは俺の方だよ、シャーロット。君のおかげで今俺は生きていられる。本当に、俺のお嫁さんになってくれてありがとう」
「アイラン様!!」
その後2人はこれでもか!と言うくらい愛しあったのは、言うまでもない。
翌日
「シャーロット、アイラン君。元気で!貿易の事もあるし、また近々会おう」
「お父様も元気でね」
お父様にギューッと抱き着く。
「父君、国に帰って話をまとめたら、またすぐに参ります。その時は、よろしくお願いします」
アイラン様の言葉ににっこり微笑むお父様。
「アリーア、わざわざお見送りありがとう、お兄様も元気でね」
「シャーロットもね。私たちの結婚式は、絶対参加してよ」
「もちろんよ」
お兄様とアリーアにも挨拶を済ます。
「それじゃあね」
皆に挨拶を済ませると、アイラン様の手の握った。
「アイラン様、それじゃあ、フェミニア王国に帰りましょうか」
私の言葉に頷くアイラン様。
一気に魔力を放出させ、無事一発でフェミニア王国に帰れたアイランとシャーロットであった。
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