宝石鉱山を見に行きます
朝目が覚めると、懐かしい天井が目に飛び込んできた。そう、ここは私の部屋だ。ありがたい事に、夫婦2人で泊まれるよう、大きめのベッドを準備してくれた。
もちろん、隣には私をしっかり抱きかかえてスヤスヤ眠るアイラン様の姿がある。どうやら昨日はかなり疲れた様で、まだぐっすり眠っているようだ。
暇だし少し庭でも散歩しようかしら。そう思い、アイラン様の腕から抜け出ようとしたのだが…ギューッと抱きしめられていて抜けられない。転移魔法を使おうかと思ったものの、そう言えばアイラン様の許可なく使う事を禁じられているんだった。
もし約束を破れば、きっと酷く怒られるわ。結婚してからのアイラン様は、私にも厳しく対応するようになった。まあ、それでもまだ甘い方だろうけれど。
仕方ないのでアイラン様の顔を眺めることにした。サラサラの青い髪に整った顔立ち、本当に美しい人ね。こうやって見るとまるで芸術品の様だわ。
じっと眺めていると、アイラン様の瞼がゆっくり上がり、美しい金色の瞳と目が合った。
「シャーロット、おはよう。君が俺より先に起きているなんて珍しいね」
にっこり微笑むアイラン様。それじゃあ、私がいつも寝坊助みたいじゃない。まあ、その通りなんだけれどね。
「アイラン様、今日はゾマー帝国を観光する予定でしょう。いつまでも寝てはいられませんからね」
「そうだったね。じゃあ早速準備をしないと」
2人で起き上がり、部屋の外で控えていたメイドを呼ぶ。一応夫婦の寝室という事もあり、こちらが呼ばない限りメイドも入ってこないのだ。
久しぶりに公爵家のメイドたちに支度を手伝ってもらい、朝食を食べに食堂へと向かう。
「ここに来てからずっと思っていたのだが、本当に何でも魔法を使って行うんだね。びっくりしたよ。昨日だって肉料理を置いたと思ったら、火を出して目の前で焼いてくれたし。まるで手品を見ているみたいだ」
2人で並んで座り、食事を取りながら改めて感心しているアイラン様。ちなみにお兄様とお父様は、今日はさすがにお仕事をしているので、先に食事を済ませている。
「確かに手品の様かもしれませんね。私もしばらくゾマー帝国に帰っていなかったので、なんだか他の人が魔法を使うのがとても新鮮ですわ」
アイラン様に向かってにっこり微笑む。するとなぜかアイラン様が近づいてきた。
「シャーロット、今は父君も兄君もいないから、イチャイチャしても問題ないよね。さあ、シャーロット、いつもの様に食べさせて」
にっこり笑って口を開くアイラン様。昨日の夜、家族の前でイチャイチャするのはお止めください。と言ったのをどうやら覚えていた様だ。使用人は見ているが、仕方がない。
こうしていつもの様に食べさせ合いっこをして朝食を食べた。
食後は出掛ける準備をして、早速出発だ。行先はもちろん、宝石鉱山の採掘場。アイラン様は宝石鉱山を見るのを、とても楽しみにしていたものね。
「さあ、アイラン様、参りましょう」
一気に魔力を込め、宝石鉱山まで転移魔法で移動した。
次の瞬間、採掘現場の目の前に到着していた。
「アイラン国王、シャーロット王妃、お待ちしておりました。今日案内役を務めさせていただく、ヴォルトと申します。どうぞよろしくお願いいたします」
予めお父様が話を付けておいてくれたので、着いた瞬間すぐに案内人の人が来てくれた。
「採掘場はまれに石が降って来る事がありますので、予めバリア魔法を掛けさせていただきますね。このバリア魔法は、他の者が触れても大丈夫なように、特殊な作りですのでご安心ください」
へぇ~、今は安全なバリア魔法もあるのね。しばらくゾマー帝国を離れている間に、魔法も進化している様だ。
ヴォルトさんに連れられ、鉱山の中へと入っていく。
ちなみに宝石鉱山に来るのは私も初めて。どうなっているのか、ワクワクしているのだ。中は薄暗いかと思ったが、魔法の力で照らされている為、思ったより明るい。
「ヴォルト殿、皆手をかざしているみたいだが、あれは何をしているのだい?」
確かにみんな岩に向かって手をかざしているわ。
「あの者達は、魔力で宝石を探しているのです」
「まあ、そんな事が出来るのですか?」
「ええ、もちろん、特殊な訓練を積んだ者しか出来ませんけれどね」
なるほど!魔力って本当に色々な事に使えるのね。何でも使える気になっていたけれど、実は私も魔力を意外と使いこなせていないのかもしれないわ。
宝石を見つけると、周りの岩を魔力で破壊し次の工程に回す様だ。
「こちらは宝石が含まれている岩石から、宝石を魔力で取り出す作業です」
岩石に手をかざし、器用に宝石を取り出している。でもこの作業、一歩間違えると宝石を傷つけてしまう事もあるだろうから、かなり集中力が必要ね。凄いわ。
「ここでは取り出された宝石をきれいに洗い、さらに不純物を取り除く作業を行っています」
もちろんここでも魔法が使われている。こんなに大変な思いをして宝石が発掘されるのね。そりゃ高いはずだわ。アイラン様も真剣な眼差しで、食い入るようにして見つめている。
「採掘場はこんな感じです。別店舗でお土産用の宝石も売っておりますので、そちらもご案内させていただきますね」
そう言うと、転移魔法を使い別店舗へと移動した。どうやらここは採掘された宝石の加工&販売する店舗の様だ。店舗の奥では女性たちが宝石を魔力で削りながら、アクセサリーを作っている。
私たちが案内されたのは、一番奥の部屋。きっと貴族の為に準備された、特別室なのだろう。
「さっき見て頂いたのは、エメラルドの採石場ですが、他にも色々な採石場で色々な種類の宝石が取れます。ここでは、そんな宝石が豊富に揃っているんですよ。今お持ちしますから、ゆっくり見て行ってください。もちろん、オーダーメイドも可能ですから」
満面の笑みを浮かべ部屋を出て行くヴォルトさん。きっと私たちに色々と買わせるつもりだろう。
「シャーロット、せっかくだからみんなにお土産としていくつか買っていこう」
フェミニア王国には宝石鉱山が無い為、宝石と言えば珊瑚や真珠が一般的だ。きっと色々な宝石を買っていけば、オルビア様達も喜ぶだろう。
「お待たせいたしました。より純度の高い最高級の品ばかりを集めましたので、ぜひご覧ください」
嬉しそうに宝石を持ってきたヴォルトさん。商売人の顔だわ。
「シャーロット、見たことも無い様な奇麗な宝石が沢山あるね。これはオルビアと同じ瞳の色をしているな。そうだ、皆の瞳の色の宝石をお土産に買っていこう」
「それはいい考えですわ。それでしたら、オルビア様はエメラルド(緑)、フェアラ様とファビオ様はアクアマリン(水色)、アルテミル様はアメシスト(紫)ね。後、アイラン様はスファレライト(金)、私はサファイア(青)にしましょう」
とりあえず男性はネックレス、女性はネックレスとイヤリングにした。結構な量なのと、デザインにもこだわった為、後日公爵家に持ってきてくれることになった。
「こんなに沢山お買い上げいただき、ありがとうございました」
ニコニコ顔のヴォルトさん、何度も私たちに頭を下げてくれた。
「シャーロット、ゾマー帝国にはこんなに奇麗な宝石が沢山あるなんてびっくりだよ。それに、魔法で全て作業している姿を間近で見られたし。今日は楽しかったよ。ありがとう」
どうやらアイラン様も大満足だった様でよかったわ。
2人仲良く手を繋いで、公爵家に戻った2人であった。
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