エピローグ ~その後~
勇者である僕はヒロインである黄瀬さんと結ばれてめでたしめでたし。
なので、これ以上の話って多分蛇足なんだと思う。
でもそのあとの出来事を描くのってアニメやマンガでもよくあるパターンだ。
視聴者も読者も気になるってことなのだろう。
だから僕も少しだけ話してみようと思う。
その後の僕と黄瀬さんの日常を少しだけ――。
まず最初に言うべきは僕と黄瀬さんは付き合い始めたということだ。
あんなフィナーレを迎えておいて交際しないわけがないけど、そこは一応。
その黄瀬さんだけど《にくきゅーフレンズ》は辞めたんだ。
色んな理由があるみたいだけど、一番の理由はまるちぃの役目が終わったからだという。
僕としては寂しいけれど、黄瀬さんが決めたのならその判断を尊重するのみだ。
そうそう、彼女はもう三〇五号室にはいない。
DQNに部屋を知られている以上、住み続けるわけにはいかないからだ。
なので今は僕の父親が所有するもう一棟のアパートのほうに住居を移している。
父親に事情を説明したら、そういうことならと了承してくれたのだ。
その際、僕と黄瀬さんの関係をしきりに聞いてきたけど、いずれ言うからとだけ答えておいた。
多分、ばれているんだろうな。別にいいけど。
黄瀬さんの通っている高校は引っ越し先のアパートからの方が近いらしく、通勤が大分楽になったとも喜んでいた。
お隣さんではなくなってしまったけれど、DQNの脅威から解放され高校も近くなったのなら僕も嬉しい。
ちなみに新たに三〇五号室に入居する人はまだ未定。
またメイドが引っ越してきたりして、なんてことを黄瀬さんに言ったら凄い睨まれた。
何度も謝ったけどもう一度ここで謝っておこうかな。
ごめんね。僕の推しメイドは過去も現在も未来も君だけだよ。
そうだ。
メイドと言えば引っ越しが落ち着いたらまたメイド喫茶で働きたいと昨日、黄瀬さんから伝えられた。
自分を救うとかそんな大層な理由なんかじゃなく、メイドという仕事が純粋に楽しいからだそうだ。
僕は当然、賛成だしご主人様として通うとも答えた。
なのに彼女は僕には来ないでと拒絶した。
なんで!? と聞くと、普通に恥ずかしいかららしい。
家で二人っきりのメイドごっこならいいよ。
と可愛く言われたので素直に引き下がったけれど。
でも心配だ。
僕の目の届かないところで、僕みたいな奴が黄瀬さんを推しメイドにして毎週通いだしたらどうしようかと。
仮にそんな男が現れた場合、僕はどうしたらいいのだろうか。
僕みたいな奴なら親近感が湧いてがんばれと言いたくなるだろうし、でも黄瀬さんを僕みたいな奴に推されるのもなんか腹が立つし。
さて、僕はどうしたらいいのだろうか。
黄瀬さんが信号の向こうで手を振っている。
デートだからおめかしするねと言っていた彼女は、そこだけスポットライトが当たっているかのように、とにかく可愛い。
僕は、自分の彼女なんだぜと主張するように大きく手を振り返すと、信号が青になるのを待った。
それはさておき、彼女がここに来るまでに答えを出さなければならない。
え? 僕みたいな奴が仮にいたとしてそいつを応援するか否かの答えだって? 違う違う。そんなことじゃなくて、もっと重大且つ男たるもの的なところでの答えだ。
それが何かは教えないけれど、これだけは言っておく。
オタクだってやるときはやるんだ。
お・わ・り
僕はリュックサックからポスターを出したりはしない 真賀田デニム @yotuharu
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